職場での人間関係は、私たちの日々の生活の大きな部分を占めています。しかし、時としてこの関係性が歪み、パワーハラスメント(パワハラ)という深刻な問題に発展することがあります。立場が上の人からの一方的な攻撃だけでなく、同僚や部下からの攻撃、さらには悪意のない言動がハラスメントとみなされるケースもあるため、非常に複雑化しています。自分が被害者になるだけでなく、知らず知らずのうちに加害者になってしまう可能性も…。
本記事では、職場で陥りがちなパワハラの見分け方と、その対処法について、具体例や成功事例を交えながら詳しく解説します。
あなたは大丈夫?パワハラチェックリストで自分の状況を確認!
「もしかして、自分もパワハラの被害を受けているのかも…?」
そう感じながらも、確信が持てずに悩んでいる方もいるのではないでしょうか?
まずは、具体的なチェック項目で、自分の状況を客観的に把握してみましょう。
【パワハラチェックリスト】
□ 上司や先輩から、人格を否定するような発言を受けている
□ 仕事のミスに対して、必要以上に叱責される
□ いつも無視されたり、仲間外れにされていると感じる
□ 能力や経験を大きく超えた仕事を押し付けられている
□ プライベートな時間にも、仕事の連絡が頻繁にくる
□ 仕事上の失敗を、周りの人たちに言いふらされたことがある
□ 退職をほのめかすと、態度が軟化することがある
これらの項目に、1つでも当てはまる場合は、パワハラに関係している可能性があります。
複数の項目にチェックがついた方は、早急な対策が必要です。
【類型別】職場でよくある!パワハラの具体例
パワハラは、大きく6つの類型に分けられます。
ここでは、それぞれの類型について具体的な例を挙げて解説していきます。
自分が経験したことがある、もしくは今まさに直面している状況と照らし合わせながら、読み進めてみてください。
1)身体的な攻撃(物理的な暴力)
- 同僚の頭を叩く
- 肩を強く掴む
- 足を蹴る
- 物を投げつける
- 机を強く叩きつける
2)精神的な攻撃(言葉の暴力)
- 「お前は使えない」「役立たず」など、人格を否定するような発言をする
- 「こんなこともできないのか!」と、大声で叱責する
- 他の人の前で、ミスを必要以上に暴露し、恥をかかせる
- 脅迫めいた発言で、精神的に追い詰める
- 辞職を強要する
3)人間関係からの切り離し(孤立)
- 特定の人を無視する
- 会議や飲み会に誘わない
- 必要最低限の情報しか共有しない
- 他の同僚と話すことを禁止する
4)過大な要求(業務上、明らかに不当な要求)
- 納期が不可能な量の仕事を押し付ける
- 専門知識や経験が全くない仕事を任せる
- 業務とは関係のない私用を強要する
- 自分の失敗を押し付ける
5)過小な要求(能力や経験に不相応な簡単な仕事のみを与える)
- 新人でもできるような、単純作業ばかりを任せる
- 能力を発揮できるような、やりがいのある仕事を全く与えない
- スキルアップのための研修や教育の機会を与えない
6)プライベートへの介入
- 私物の持ち物を許可なく使う
- プライベートな内容を執拗に聞き出す
- 仕事終わりに、無理に飲み会に誘う
- SNSでの交友関係に干渉する
- 恋愛関係を強要する
上記はあくまでも一例で、この他にも様々なパターンが考えられます。
重要なのは、「これはパワハラに当たるだろうか?」と疑問を感じたら、一人で抱え込まずに誰かに相談することです。
【タイプ別】こんな上司は要注意!パワハラ加害者の特徴と対処法
パワハラ加害者には、いくつかの共通した特徴が見られます。
ここでは、代表的な3つのタイプと、それぞれの対処法について解説します。
1)支配型
特徴: 自分が全てにおいて正しいと思い込み、部下を自分の思い通りにコントロールしようとする。
対処法: 反抗したり、感情的に反論すると逆効果になる可能性があります。冷静さを保ち、必要最低限のコミュニケーションに留めましょう。
2)自己愛型
特徴: プライドが非常に高く、自分の非を認められない。常に自分が賞賛されることを求めている。
対処法: 反論は避け、相手の自尊心を傷つけないように注意しましょう。意見が対立した場合は、第三者を介して冷静に話し合うことが大切です。
3)不安型
特徴:自信がなく、不安が強い。そのため、部下に対して威圧的な態度をとったり、過剰に管理しようとする。
対処法: 相手の不安な気持ちに寄り添い、安心させる言葉を掛けることが有効です。
【実例紹介】パワハラ上司に効果的な対処法5選
「最初は軽い冗談だと思っていたのに…」
パワハラは、放置すると徐々にエスカレートしていくケースが少なくありません。
パワハラを受けていると感じたら、下記の方法を試してみましょう。
重要なのは、一人で抱え込まず、誰かに相談したり、助けを求めることです。
1)記録を残す
いつ、どこで、誰が、どのような言動をしたのか、メモや日記に記録する。可能であれば、ボイスレコーダーなどで録音しておく。
2)信頼できる人に相談する
同僚、先輩、家族、友人など、信頼できる人に相談し、話を聞いてもらう。
3)会社の相談窓口に相談する
人事部、コンプライアンス部門など、会社の相談窓口に相談する。
4)専門機関に相談する
労働基準監督署、法テラス、弁護士会など、専門機関に相談する。
5)転職する
パワハラが改善されない場合、心身の健康を守るためには、転職も視野に入れる。
一人で悩まないで!パワハラに関する相談窓口一覧
一人で抱え込みがちなパワハラ問題。「どこに相談したらいいか分からない…」という方のために、相談窓口をまとめました。
主な相談窓口には、以下のようなものがあります。
- 会社の相談窓口(人事部、コンプライアンス部門など)
- 労働組合
- 都道府県労働局の総合労働相談コーナー
- 法テラス
- 弁護士会
- 精神科医
状況に応じて適切な相談窓口を選び、専門家のアドバイスを受けるようにしましょう。
【企業の成功事例】パワハラのない職場環境を作るための3つの取り組み
パワハラのない、働きやすい職場環境を作るためには、会社全体での取り組みが不可欠です。
ここでは、実際に成果を上げている企業の取り組み事例をご紹介します。
1)ハラスメント研修の実施
パワハラの定義や類型、防止策、相談窓口などを、具体的な事例を交えながら分かりやすく説明する研修を定期的に実施。
2)相談しやすい環境づくり
具体例: 上司と部下、同僚同士が日頃からコミュニケーションを取りやすい環境を作る。例えば、定期的な面談や、気軽に意見交換ができる場を設ける。
3)就業規則の明確化
具体例: パワハラの定義、禁止行為、相談窓口、懲戒処分などを就業規則に明記し、全従業員に周知徹底する。
まとめ
パワハラは、被害者個人だけでなく、職場全体の生産性や雰囲気を悪化させる深刻な問題です。しかし、適切な知識と対処法を身につけることで、パワハラを防ぎ、健全な職場環境を作ることができます。個人としては、パワハラの兆候に敏感になり、適切な対応を取ることが重要です。同時に、組織としても明確な方針と対策を講じ、全ての従業員が安心して働ける環境づくりに取り組む必要があります。パワハラのない職場は、個人の成長と組織の発展の両方を促進します。一人ひとりが意識を高め、互いを尊重し合う関係性を築き、誰もが安心して働ける職場を作り上げていきましょう。