仕事に追われて1日が終わり、気づけば運動も家計の見直しも後回しにしてしまう、そんな悩みを抱える人は少なくありません。お金・時間・健康は別々のものに見えて、実は深くつながっています。お金があっても時間がなければ心に余裕がなくなり、健康を損なえばお金も時間も活かせません。この3つを同時に整える「ライフキャピタル思考」は、人生を資本としてデザインする長期戦略です。特に30〜45歳の社会人にとって、豊かさの鍵となる考え方です。

1.ライフキャピタル思考とは何か?金・時間・健康を「資本」として捉える視点
ライフキャピタル思考とは、人生を支える要素を「資本(キャピタル)」と捉え、長期的に増やす考え方です。従来のように「お金のために時間を使い、健康を犠牲にする」働き方から脱却し、3つの資本を互いに補い合う形で活かすのが特徴です。この考え方は、自分らしい生き方を実現するための新しい枠組みとして注目されています。
1-1.お金のキャピタル
お金は最もわかりやすい資本ですが、「量」ではなく「使い方の質」が本質です。内閣官房「ファイナンシャル・ウェルビーイング実現に必要な金融経済教育」でも、経済的幸福度は収入額よりも「お金の使い方」や「リスク管理力」で決まると報告されています。
たとえば、健康的な食事、睡眠環境への投資、自己成長のための学びなど、未来へのリターンを生む支出が重要です。これらは単なる出費ではなく、自分の人生資本を増やす「投資」になります。一方、過剰な消費や浪費は時間と健康を奪う要因にもなりかねません。
1-2.時間のキャピタル
時間は最も貴重で、誰にも平等に与えられた資本です。米国の大手金融サービス企業「BBH Capital Partners」の「The value of time: Understanding and maximizing time affluence」によると、「時間の豊かさ」を感じる人ほど幸福度が高いとされています。
そのためには「効率」よりも「目的に合った時間の使い方」を重視しましょう。自分にとって価値のある行動、家族との時間、体を動かす時間、未来への学び、に時間を投資することが、長期的な幸福を生みます。逆に、惰性でSNSを眺めたり、無目的に残業する時間は、人生資本を減らす「浪費」といえます。
ライフキャピタル思考では「時間の見える化」と「優先順位づけ」が重要です。手帳やアプリで1日の時間を振り返り、価値を生む活動にどれだけ時間を使えているかを意識するだけで、資本のバランスが変わります。
1-3.健康のキャピタル
健康は他のすべての資本の基盤です。JILPT(労働政策研究・研修機構)の報告「健康資本投資と生産性」では、健康な人ほど仕事の生産性が高く、医療費や欠勤リスクが低いと明らかにされています。
また、プロメッドサイエンス誌の論文 “Integrating Healthspan and Wealth Span” では、健康寿命を延ばすことが資産寿命(Wealth Span)の延長につながると論じています。つまり、健康を守ることは「人生の収益力」を高める投資そのものです。
定期的な運動、十分な睡眠、心を整える習慣。どれも一見地味ですが、最も大きなリターンを生む“複利投資”です。
2.家計のキャピタル:お金の使い方を「投資」に変える生活設計
家計のキャピタルを高めるためには、「支出の目的を明確にすること」が重要です。内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書2022」によると、家計管理能力の高い人ほど生活満足度も高く、健康状態にも良い影響を及ぼすことが分かりました。これは、家計と健康が深く結びついていることを示しています。また、「お金を稼ぐために必要なのは信用・価値・時間・健康」で、「お金は目的ではなく結果である」と言われています。
信用や健康、時間を大切にする姿勢こそがライフキャピタル思考の核心です。支出を見直す際には、将来の自分の価値を高めるか、健康や時間を損なっていないか、そしてその出費が一時的な快楽でなく幸福につながるかを考えることが大切です。これを意識することで、家計の支出は「消費」から「投資」へと変わり、資本が自然と増えていきます。
3.時間のキャピタル:有限な時間を資産化する思考と実践
時間を増やすことはできませんが、価値を高めることはできます。
BBH Capital Partnersの報告でも「時間の使い方を選ぶ力」が幸福度を左右する要因とされています。まず「時間の見える化」を実践しましょう。1週間のスケジュールを振り返り、何にどれだけ時間を費やしたかを記録します。その上で、「投資」「消費」「浪費」の3分類を行うのがポイントです。
家族との会話や運動、読書は投資。無目的なネットサーフィンや残業のしすぎは浪費です。
次に、「やらないことリスト」を作ると、生活に余白が生まれます。完璧を目指すのではなく、優先度の低いタスクを減らすだけで、健康づくりや学びの時間が確保できます。
また、自動化や委任も有効です。家計簿アプリ、定期配送サービス、カレンダー連携ツールなどを活用すれば、日常の繰り返し作業を削減し、自由な時間を生み出せます。「自分の時間単価を上げる」意識を持つと、行動の選択基準が明確になります。
4.健康のキャピタル:心身を整え、長期的リターンを生む「健康投資」
健康投資の基本は「予防」と「持続」です。食事・運動・睡眠の質を高めることは、すぐに成果が見えにくいですが、長期的には医療費削減・集中力向上・生産性向上という形で確実にリターンをもたらします。
また、メンタルヘルスも重要です。ストレスの蓄積は仕事の効率を下げ、結果的に時間とお金の損失につながります。休日には意識的に「何もしない時間」を確保すること、趣味に没頭する時間を取ることが、心の健康を保つうえで有効です。
内閣府のウェルビーイング調査でも、健康状態が良好な人ほど経済的満足度が高いと報告されています。つまり、健康は他の資本を育てる“源泉”なのです。
まとめ
お金・時間・健康の三つの資本は、互いに支え合う関係にあります。お金を賢く使えば時間と健康を守れ、健康を維持すれば働く力が高まり、時間を整えれば心の余裕が生まれます。この循環がライフキャピタル思考の本質です。短期的な利益よりも長期的な安定を重視し、まずは1日の中で自分のための30分を確保してみましょう。小さな行動が未来の資本を確実に増やし、人生を豊かに導く羅針盤となります。
参考文献
日本経済新聞社スタイル「お金×時間×健康 働く女性の理想バランスはこれ」 https://style.nikkei.com/article/DGXMZO28875470S8A400C1000000/
Promed Science “Integrating Healthspan and Wealth Span: A Conceptual Framework for Financial Longevity” https://promedsci.org/articles/Integrating%20Healthspan%20and%20Wealth%20Span%20A%20Conceptual%20Framework%20for%20Financial%20Longevity
内閣官房「ファイナンシャル・ウェルビーイング実現に必要な金融経済教育」 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/data4/data4_siryou6.pdf
BBH Capital Partners Insights “The value of time: Understanding and maximizing time affluence” https://www.bbh.com/us/en/insights/capital-partners-insights/the-value-of-time–understanding-and-maximizing-time-affluence.html
労働政策研究・研修機構(JILPT)「健康資本投資と生産性」 https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2018/06/pdf/030-048.pdf
内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書2022」 https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/manzoku/pdf/report06.pdf
ログミーBusiness「お金を稼ぐために必要なのは信用・価値・時間・健康」 https://logmi.jp/main/career/327050


