研究開発や技術開発というと、大企業や研究機関だけが取り組むものと思われがちです。しかし、現在は個人事業主やフリーランス、小規模事業者でも、国の支援を受けて新しい技術やサービスを生み出せる環境が整っています。
経済産業省によると、日本の研究開発の約7割は民間によるものであり、その中でも中小企業や個人の技術革新が地域経済の成長を支えているとされています。
この記事では、個人でも活用できる研究開発減税と技術支援制度の基礎をわかりやすく解説します。自分のビジネスや副業で新しい挑戦を始めたい方は、制度を理解することが第一歩です。

1. 研究開発減税の基本と制度の背景
研究開発減税とは、研究や技術開発にかかった費用の一部を法人税や所得税から控除できる制度です。正式名称は「試験研究費税額控除」といい、法人だけでなく一定の要件を満たす個人事業主も利用可能です。
この制度の目的は、民間の研究開発を促進し、日本の技術競争力を高めることにあります。経済産業省の公式サイトでは、企業規模を問わず、社会課題の解決につながる研究や技術開発を支援していると明記されています。
1980年代から続く制度ですが、近年は中小企業や個人にも適用範囲が広がりました。令和6年度の改正では「オープンイノベーション促進税制」などが新設され、大学や研究機関と連携する取り組みも対象となりました。
例えば、次のような取り組みが該当する場合があります。
- 自社業務を効率化するための独自アプリの開発
- 新素材の試作や改良を重ねる開発活動
- AI・IoTを活用した新しい仕組みの検証
研究開発減税は、単なる節税手段ではなく「新しい価値を生み出す挑戦者への後押し」です。国税庁も、「新たな知識を得るための体系的な研究または技術の高度化を目的とする活動」と定義しており、創意工夫に基づいた取り組みであれば、小規模でも対象となる可能性があります。
2. 個人や小規模事業者が対象となる条件とポイント
個人や小規模事業者が研究開発減税を活用するには、いくつかの要件を理解しておく必要があります。第一に、「新しい知見を得ることを目的とした研究・開発」であることです。単なる業務改善ではなく、独自の発想や試行錯誤を含む活動が求められます。
第二に、「支出の妥当性と証拠の整備」が重要です。人件費・試作材料費・外注費など、研究に直接関連する費用が対象となります。帳簿上で明確に区分し、開発記録や発注書を残しておくことが望ましいです。
第三に、「活動内容を説明できる資料の保存」が必要です。経済産業省や国税庁の調査では、申請の際に成果物や報告書を提出できる体制が信頼性の判断材料とされています。
名古屋市の「産業技術支援センター」など、自治体レベルでも技術相談や試作支援を行っており、こうした地域サポートを活用することで申請の精度を高めることができます。
不安がある場合は、税理士や中小企業診断士に相談するのがおすすめです。専門家の助言を得ながら準備することで、対象範囲の見落としや手続きミスを防ぐことができます。
3. 技術支援制度の種類と活用の方向性
研究開発減税とあわせて活用したいのが、技術支援制度です。これらは補助金や委託研究として提供され、資金だけでなく技術面の支援も受けられます。
代表的な制度には、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)、JST(科学技術振興機構)、SBIR(中小企業技術革新制度)があります。
NEDOは省エネルギーや再生可能エネルギーなどの研究開発を支援し、個人でも条件を満たせば応募可能です。JSTは「創発的研究支援事業」で、独創的なアイデアを持つ研究者に長期的な支援を行っています。
また、SBIR制度はスタートアップや小規模企業が技術検証から事業化まで進めるためのフェーズ型支援が特徴です。さらに、自治体や地域支援機関では「産業技術センター」や「テクノプラザ」などが設けられ、試作品開発の設備貸与や技術相談を受けられます。
名古屋市や愛知県では特に、ものづくり企業や個人事業主の支援が充実しています。制度を選ぶ際は、「自分の開発テーマがどの支援目的と一致しているか」を明確にすることが大切です。社会的意義があり、将来の市場創出につながるテーマであれば、採択の可能性が高まります。
4. 制度を活かすための実践ステップと注意点
制度を効果的に活用するためには、次の3つのステップを意識しましょう。
- 研究開発の目的を明確にする
どの課題を解決するのか、どのような成果を目指すのかを具体化します。 - 専門家や支援機関に相談する
申請や税務のプロセスは複雑なため、早めに相談することで正確性と効率が向上します。 - 書類・証拠・スケジュールを整える
経費の記録、成果報告、申告時期を整理し、計画的に進めます。
年度をまたぐと控除が受けられない場合もあるため、タイミングの把握が重要です。 また、補助金の公募期間は短く設定されることが多いため、常に最新情報を確認しておきましょう。制度を単独で使うより、複数組み合わせることで効果が高まります。
例えば、NEDO補助金で研究費を確保し、研究開発減税で税負担を軽減するなどの方法です。こうした戦略的な運用が、個人事業の継続的な成長を支えます。
5. まとめ 個人の挑戦を支える研究開発支援の意義
研究開発減税や技術支援制度は、個人や小規模事業者が持つ創意と情熱を応援する仕組みです。自らのアイデアを形にしたいという気持ちがあれば、規模の大小に関わらず活用する価値があります。国が制度を整えている背景には、「小さな挑戦が社会を変える」という理念があります。
専門家の助言を得ながら制度を理解し、計画的に行動すれば、個人でも十分に研究開発の担い手になれる時代です。あなたのアイデアが、次の時代を動かす原動力になるかもしれません。支援制度を上手に使い、自分の力で未来を切り開いていきましょう。
参考文献
- 経済産業省「研究開発税制」https://www.meti.go.jp/policy/tech_promotion/tax.html
- 国税庁「試験研究費の税額控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5441.htm
- 財務省「研究開発税制の概要」https://www.mof.go.jp/tax_policy/councils/zeicho/250603_4-2.pdf
- SBIR公式サイト「中小企業技術革新制度」https://sbir.csti-startup-policy.go.jp/gaiyo
- NEDO「事業紹介・支援制度一覧」https://www.nedo.go.jp/shortcut_jigyou.html
- JST「創発的研究支援事業」https://www.jst.go.jp/souhatsu/index.html


