最新記事

image

BtoB営業の成約率を高める価格戦略と実践法

DCF法で株価を算出する!実務で役立つ評価モデル

image

要約

株価が「割安か割高か」を判断する一生モノの武器「DCF法」を徹底解説。 企業が将来生み出すキャッシュフローを現在価値に割り引くことで、市場のノイズに左右されない理論株価を算出する方法を、初心者にも分かりやすく解説します。WACCやターミナルバリューの設定方法、実務で使えるExcelモデルの構築ステップ、メリットと限界点まで網羅。短期的な値動きに惑わされず、長期的な資産形成を目指すための企業価値評価モデルをマスターしましょう。

目次

株式投資を始めたばかりの方や、副業として資産運用に取り組みたい方にとって「株価が割安か割高かをどう判断するか」は常に重要なテーマです。長期的に安定した投資成果につなげる手法の一つが「DCF法(Discounted Cash Flow:割引キャッシュフロー法)」です。

本記事では、DCF法の基本から実務での活用方法までを、初心者にも分かりやすく整理していきます。

1. DCF法とは何か

DCF法の根本的な考え方はシンプルです。これから、DCF法の仕組みについて具体的に解説していきます。

1-1. DCF法の仕組み

企業は将来にわたって売上を生み出し、そこから経費や税金を差し引いて最終的に「自由に使えるキャッシュフロー」を得ます。そのキャッシュフローを予測し、資本コスト(投資家が期待するリターン率)で割り引いて現在の価値に直すことで、企業の理論的な価値を算出します。

この手法が重視される理由は、単なる株価の上げ下げに左右されるのではなく、企業の本質的な稼ぐ力に基づいて評価できるからです。

1-2. 他の評価手法との違い

DCF法は「将来キャッシュフローを重視する点」で他の評価手法と異なります。例えば、配当割引モデル(DDM)は配当のみに焦点を当てますが、DCF法では配当の有無にかかわらずキャッシュフローを評価対象にできるため、成長企業や内部留保を厚く積み上げる企業の価値を正しく測ることが可能です。

また、株価指標を利用する相対評価法と比べて、市場全体の状況に影響を受けにくい点も特徴です。ただし、将来予測の精度に依存するため、数値設定の妥当性をどう担保するかが課題となります。この点は、実務で活用する際に特に意識すべき部分です。

1-3. 投資家にとっての意義

DCF法を理解することは、投資判断の「ものさし」を自分で持つことにつながります。自分で算出した理論株価と実際の市場株価を比較することで、投資するかどうかを冷静に判断でき、結果として、短期的な価格変動に振り回されず、長期的な資産形成を安定して進めることが可能になります。

2. 企業価値を導くステップ

2-1. キャッシュフローの予測

DCF法の第一歩は、将来のフリーキャッシュフローを予測することです。一般的には、売上高の成長率、営業利益率、設備投資や運転資本の変化などを前提にして5〜10年分の予測を行います。過去の実績データに加え、業界動向やマクロ経済の見通しを織り込むことが重要です。

2-2. 割引率(WACC)の設定

次に重要なのが割引率の設定です。割引率には「WACC(加重平均資本コスト)」が使われるのが一般的です。これは、株主資本コストと負債コストを加重平均したもので、投資家が期待するリターン水準を示します。

例えば、株主が年率8%、債権者が年率3%を要求し、資本構成が株式70%・負債30%であれば、WACCは約6.5%となります。この割引率を正しく設定することで、将来キャッシュフローのリスクを反映させ、より現実的な企業価値を算出できます。

2-3. ターミナルバリューの計算

DCFモデルにおいて、最終年度以降の価値をどう扱うかも重要です。一般的には、永久成長モデルを用いて「ターミナルバリュー」を計算します。これは最終年度のキャッシュフローを一定の成長率で無限に続くと仮定し、それを割引率で現在価値に直す方法です。

ターミナルバリューは全体の企業価値の大部分を占めることが多いため、設定の妥当性が株価評価に大きく影響します。

2-4. 実務での活用イメージ

実際の企業分析では、エクセルなどのツールを用いてキャッシュフローをシミュレーションし、割引計算を行います。投資銀行やコンサルティング会社では標準的に使われる手法であり、事業価値評価やM&Aの現場でも必須のモデルです。

3. 実務で使えるDCFモデル構築の流れ

3-1. データ収集と前提条件の設定

DCFモデルを構築する第一歩は、正確なデータ収集です。過去数年分の財務諸表を確認し、売上高、営業利益、減価償却費、設備投資、運転資本の変動を把握します。これらは将来のフリーキャッシュフローを予測する基盤となります。

特に売上の成長率や利益率は、業界平均や競合他社の状況も参考にしながら設定すると現実的です。また、金利動向やインフレ率、為替レートなどのマクロ経済環境も無視できません。

過度に楽観的な前提を置くと評価結果が過大になり、投資判断を誤る可能性があるため、複数のシナリオを準備することが実務では推奨されています。

3-2. 将来キャッシュフローの予測

前提条件を設定したら、5〜10年先までのフリーキャッシュフローを予測します。売上高の伸びや営業利益率を予測したうえで、非現金費用である減価償却を加算し、設備投資や運転資本の増減を差し引くことでキャッシュフローを導きます。

例えば、売上が年率5%で成長し、営業利益率が10%、毎年の設備投資が売上の5%程度と想定した場合、フリーキャッシュフローは次第に増加していきます。

ここで重要なのは、一貫性と透明性です。どの数値をどの根拠で設定したのかを明確にしておくことで、モデルの信頼性が高まります。

3-3. 割引計算と企業価値の算出

予測したキャッシュフローをWACCで割り引いて現在価値を求めます。各年度のキャッシュフローを割引いたものを合計し、さらにターミナルバリューを加えると、企業全体の価値が算出されます。

最終的には、企業価値から負債を差し引き、残りを発行済株式数で割ることで理論株価を導くことが可能です。このプロセスをエクセルなどで自動化すれば、前提条件を変更するたびに結果が即座に更新されるため、感度分析も容易に行えます。

実務では、シナリオ別に「楽観ケース」「標準ケース」「悲観ケース」を作成し、株価の幅を把握することが多いです。

4. DCF法のメリットと限界を理解する

4-1. メリット

DCF法の最大のメリットは、企業の本質的な価値を数値化できることです。市場のノイズに左右されず、長期的な収益力を基に判断できるため、短期的な株価変動に惑わされにくくなります。特に成長企業や配当を行わない企業でも評価できる点は、他のモデルにはない強みです。

4-2. 限界

一方で、DCF法は将来予測の精度に大きく依存します。売上高や利益率の予測が現実と乖離すれば、算出された株価も大きくずれることになります。また、ターミナルバリューが企業価値の大半を占めるケースが多く、成長率や割引率のわずかな違いが大きな差を生む点もリスクです。

加えて、DCFモデルの構築には一定の知識と労力が必要です。特に初心者にとっては「数値設定が正しいのか」という不安を抱きやすいため、参考となる業界データやアナリストレポートを組み合わせて利用するのが現実的です。

まとめ

DCF法は、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて企業の理論株価を算出する強力な評価モデルです。自動化ツールやシナリオ分析を活用すれば、個人投資家でも実務的な判断が可能になります。

ただし、予測に依存するため不確実性が伴い、ターミナルバリューや割引率の設定が結果を大きく左右します。そのため、DCF法単独ではなく、他の評価手法と組み合わせて総合的に判断することが重要です。

参考文献

Discounted Cash Flow (DCF) Explained With Formula and …|Investopedia
https://www.investopedia.com/terms/d/dcf.asp

Discounted Cash Flow (DCF)|Corporate Finance Institute
https://corporatefinanceinstitute.com/resources/valuation/discounted-cash-flow-dcf/

DCF Model Training|Wall Street Prep
https://www.wallstreetprep.com/knowledge/dcf-model-training-6-steps-building-dcf-model-excel/

Step by Step Guide on Discounted Cash Flow Valuation|Fair Value Academy
https://www.fairvalueacademy.org/discounted-cash-flow-dcf-approach/

Discounted Cash Flow Analysis—Your Complete Guide with Examples|Valutico
https://valutico.com/discounted-cash-flow-analysis-your-complete-guide-with-examples/

Intrinsic Value of a Stock: What It Is and How To Calculate It|Investopedia
https://www.investopedia.com/articles/basics/12/intrinsic-value.asp

記事に関する質問はコチラから

ここに見出しテキストを追加