近年、多くの企業が人材確保や定着率向上のために、福利厚生制度の強化に取り組んでいます。中でも注目されているのが「生命保険の法人活用」です。従業員に対する安心の提供だけでなく、企業経営にもプラスの効果をもたらす点が評価されています。

これまで福利厚生といえば、交通費支給や住宅手当など金銭的な支援が中心でしたが、従業員の健康意識の高まりや人生100年時代を背景に、「もしものときへの備え」も重視されるようになってきました。企業が生命保険を活用することで、万が一の事態に備えながら、社員の信頼を得る施策として機能させることが可能です。

本記事では、企業がどのように生命保険を福利厚生に取り入れられるのかを具体的に解説していきます。税務的な視点、導入時の注意点、制度設計のヒントも交えて紹介しますので、企業経営者や人事担当者にとって有益な内容になるはずです。

1. なぜ今、福利厚生が見直されるのか

かつての日本企業は終身雇用や年功序列によって従業員の生活を支えてきましたが、近年は雇用の多様化により従業員のニーズも複雑化しています。特に中小企業では人材流出を防ぐため、福利厚生の充実が急務となっています。

優秀な人材を確保するには、給与だけでなく安心して働ける職場環境を整えることが求められており、その一環として保障性の高い制度が注目されています。なかでも企業が導入する生命保険は、従業員の高齢化や病気リスク、家庭を持つ人の経済的不安への対応、健康経営の重要性の高まりといった背景から導入が進んでいます。

また、採用においても安心して働ける職場づくりは大きな評価ポイントです。こうした流れから、生命保険は単なる福利厚生を超えて、人材への投資であり、企業価値を高める戦略的施策として注目されています。

2. 生命保険が担う企業の安心基盤

生命保険を法人契約で導入する最大の魅力は、「従業員と企業の双方に安心をもたらす」という点です。福利厚生としての生命保険は、従業員にとっては万が一への備え、企業にとっては経営の安定性や信頼性の向上につながります。

たとえば、総合福祉団体定期保険を導入すれば、従業員の病気・死亡時の補償を整えながら、比較的安価な保険料で全体的なリスクヘッジが可能です。また、医療保険や入院保障特約を付けることで、従業員の健康リスクにも対応できます。

さらに、生命保険は従業員への見えないメッセージとも言えます。「あなたの万一にも備えています」という企業の姿勢が伝われば、会社への信頼度や満足度は確実に高まるでしょう。

実際、福利厚生に力を入れている企業ほど、従業員エンゲージメントや定着率が高いという傾向が見られます。特に中小企業では、大手企業との採用競争を勝ち抜くための差別化ポイントとして、保険を活用した福利厚生は非常に有効な施策と言えるのです。

3. 法人保険の種類と活用の実例

企業が導入できる生命保険にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる目的で活用されています。1つずつ紹介してまいります。

3-1.定期保険

定期保険は、保険期間中の死亡保障に特化したもので、保険料が比較的安価なため導入しやすい特徴があります。中でも総合福祉団体定期保険は、従業員全体に対して一定の保障を提供できるため、福利厚生の強化に役立ちます。

3-2.養老保険

養老保険とは、死亡保障と貯蓄の両方を備えた保険です。役員の退職金準備や長期的な人材育成に適しています。

3-3.医療保険

医療保険は、入院や手術に備えるだけでなく、社員の健康意識向上にもつながる点が注目されています。

実際にある中小企業では、従業員向けに総合福祉団体定期保険を導入し、病気や災害で死亡した場合に300万円の保険金を支払う制度を整えました。この取り組みは従業員の安心感を高めると同時に、「働きやすい企業」という印象を与え、採用活動にも良い影響をもたらしました。さらに役員には養老保険を活用し、保険満期時の資金を退職金として支給する仕組みを整えることで、組織への貢献意欲の維持にもつなげています。

3-4.法人保険

法人保険の導入では、誰にどのような保障をいつ提供するかという視点が重要になります。特に中小企業においては、税務上の損金処理の可否や、退職金制度との連動、社内規程との整合性など、多方面からの検討が求められます。近年では「健康経営優良法人認定」を目指す企業も増えており、医療保険やがん保険の導入が社員の健康増進だけでなく企業価値の向上にも貢献しています。

4. 導入時の注意点と制度設計のコツ

法人で生命保険を導入する際は、メリットだけでなくリスクにも配慮し、制度設計を丁寧に行うことが重要です。加入条件の公平性、解約返戻金や貸付の税務上の注意、退職後の保障の有無などを事前に確認しましょう。誰に、どの保障を提供するかを明確にし、役職などに応じた設計が必要です。経営・人事戦略との整合性も成功の鍵となります。

5. まとめ

生命保険を活用した福利厚生は、従業員にとっての安心感と企業の信頼性を同時に高める施策です。保険の種類や制度設計を工夫すれば、費用対効果の高い仕組みとして、企業価値の向上に貢献します。導入には税務や運用面での注意も必要ですが、専門家の助言を得ながら適切に進めれば、大きなメリットが得られるでしょう。従業員の働きやすさと企業の成長を支えるためにも、生命保険を戦略的に取り入れることが今後ますます重要となるはずです。

参考文献

– 中小企業が得する生命保険の活用方法｜THE OWNER  

– 法人保険を福利厚生で活用する方法｜法人保険比較.net  

– 法人保険のメリット・デメリット解説｜マイナビ健康経営  

– 福利厚生における生命保険の活用法｜資産防衛の教科書  

– 従業員向け法人生命保険の活用と節税・資金調達｜保険Times  

– 福利厚生保険導入の全体像｜MoneyForward