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メンタルケアが鍵!ブランクからのキャリア復帰を支える知識

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要約

育児・介護・病気などで仕事を離れた後に感じるリエントリー不安の原因と、28日ルールが示す早期介入の重要性を解説します。生活リズムの再構築、小さな成功体験の積み重ねによる自己効力感の回復に焦点を当て、ハローワークの職業訓練や企業のリターンシップ制度といった公的・民間支援の活用法を紹介します。

目次

キャリアに一時的なブランクがあることは、今や珍しいことではありません。育児、介護、病気、留学、自己研鑽など、理由は人それぞれですが、復帰を目前にすると多くの人が不安を感じるでしょう。特に「再び働けるのだろうか」「自信が持てない」「職場になじめるだろうか」といった心の揺れは、誰にでも起こりうる自然な反応です。

こうした不安を放置すると、復帰そのものが難しくなるだけでなく、メンタルヘルスにも悪影響を及ぼします。実際、再就職や復職においては、スキルや職歴以上に“心の準備”が重要だと指摘する研究もあります。

本記事では、復帰時に直面しやすい心理的課題とその対処法、さらには企業や社会が提供する支援制度について紹介します。心のケアを最優先にしながら、安心して再スタートを切るためのヒントを一緒に探っていきましょう。

1. ブランク復帰に潜む心の不安とは

1-1. リエントリー不安という現象

「リエントリー不安(Re-entry Anxiety)」とは、ブランクを経て仕事や社会に再び戻る際に感じる心理的な不安を指す言葉です。これは単なる「緊張」とは異なり、継続的なストレスや自己肯定感の低下、さらには適応障害などを引き起こすこともあります。

例えば、出産や病気で仕事を離れた人が、「自分のスキルは時代遅れでは?」「若い世代についていけるか」と感じたり、介護明けの人が「家庭との両立は無理かもしれない」と悩んだりします。こうした考えが繰り返されることで、不安が膨らみ、実際の行動(応募や面接など)に踏み出しづらくなるのです。

実際に、2年の育児休業を経て復帰を目指したAさん(40代女性)は、求人票を開くだけで手が止まってしまったと言います。何から始めていいのか分からず、自分を責める日々が続きました。これは多くのブランク経験者に共通する心の声です。

1-2. 不安の背景にある3つの要因

リエントリー不安の背景には、主に3つの要因があります。まず、長期間仕事を離れたことで生活リズムが崩れ、元に戻すのが困難になる「日常のペースの乱れ」。次に、「もう自分には無理かも」と感じる自己効力感の低下。そして、職場環境や働き方の変化への戸惑いです。復帰は心の調整も伴う大切なプロセスです。

2. 28日ルールが示す復帰の壁

2-1. 早期介入がメンタル安定の鍵

「28日ルール」とは、精神的な理由で休職した人が28日以内に復職することで、スムーズな職場復帰がしやすくなるという経験則です。イギリス・フィナンシャルタイムズの報告によると、28日を超えてしまうと不安が強まり、再び職場に戻るハードルが高くなることがわかっています。  これはブランク期間が長くなることで、社会との接点が薄れ、自信の喪失や孤立感が強くなってしまうためです。

そのため、復職が難しいと感じた場合は、できるだけ早い段階で心の不調に気づき、医療機関や専門家と連携することが重要です。厚生労働省も「早期対応が再就職・職場復帰を左右する」と指摘しており、メンタルの安定が復職の第一歩であることは明らかといえるでしょう。

2-2. 不安に向き合うための習慣づくり

復帰に向けた準備として、まずは生活リズムを整えることが推奨されます。ブランク中は夜更かしや運動不足になりがちですが、決まった時間に起き、食事・運動・睡眠を意識するだけでも、メンタルに良い影響を与えます。

また、外出や人との会話を増やすことも効果的です。買い物や図書館、カフェなどに足を運び、社会との接点を持つことで、「社会復帰に向けた足慣らし」として不安を和らげる効果が期待できます。

3. メンタルを整える3つの対策

3-1. 小さな成功体験の積み重ね

心理学的に、「できた」という体験は自己効力感(自分はできるという感覚)を高め、やる気を引き出すとされています。ですから、いきなりフルタイムの就労を目指すのではなく、まずはパートタイムや在宅ワーク、ボランティアなど、達成感を得られる小さなステップから始めるのが効果的です。

たとえば、週に一度、1時間だけのボランティア参加でも構いません。人と話す、準備をする、時間を守るという一連の行動が「社会に戻る練習」になります。

また、自宅での「小さなToDoリスト」を毎朝書き出し、終わったら丸をつけるだけでも、「やれた」という感覚が脳にポジティブな信号を送ります。この積み重ねが、自分を信じる力を呼び戻してくれるのです。

3-2. 信頼できる人に相談する

不安を一人で抱え込まず、誰かに話すことは心の安定に役立ちます。家族や友人だけでなく、キャリアカウンセラーや復職支援の専門機関に相談するのも効果的です。あわせて、呼吸法やマインドフルネスなどのセルフケアを日常に取り入れると、心を整える習慣になります。

4. 支援制度とリターンシップの活用

4-1. 公的な再就職支援制度

厚生労働省や地方自治体では、ブランクのある人向けに再就職支援制度や職業訓練プログラムを用意しています。たとえば「職業訓練受講給付金」は、一定条件を満たせば、職業訓練を受けながら生活費の一部を支援してくれる制度です。

実際に活用したBさん(30代・元看護師)は、「生活の不安を減らしながら、もう一度学び直せたことで自信が持てた」と話します。制度を利用するには、まずハローワークでキャリアカウンセリングを受け、適したプログラムに申し込む流れです。

4-2. 民間企業のリターンシップ制度

最近では、「リターンシップ(Returnship)」という制度を導入する企業が増えています。これは、一定期間の職業訓練を経て本採用を目指す、いわば“職場復帰のためのインターン制度”です。

利用者の声として、「研修期間があることで、最初から完璧にこなさなければというプレッシャーが和らいだ」「チームに受け入れられている感覚があり、安心して挑戦できた」などが聞かれています。

5. まとめ

ブランク明けの復職は、スキルよりも「心の準備」がカギになります。不安に正面から向き合い、自分を責めず、段階的に社会との接点を増やしていくことが大切です。早期対応や支援制度の活用、小さな成功体験の積み重ねによって、自己効力感を回復させることができれば、再スタートは決して難しいものではありません。自分のペースで、一歩ずつ前へ進んでいきましょう。

参考文献

Re‑Entry Anxiety: How To Ease Back Into Work After A Break  

Why ‘28 days’ is critical for staff on sick leave  

https://www.ft.com/content/0251ee18-c45e-4dd2-98dc-3e896c2bcb09

Effectiveness of a three‑component intervention supporting reemployment  

https://bmcpublichealth.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12889-024-20323-0

Returning to work after maternity leave: a systematic literature review  

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC11405436

Challenges, experiences, and potential supports for East and Southeast Asian working mothers  

https://bmcwomenshealth.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12905-024-03255-0

Counting the cost of a career break  

https://www.ft.com/content/d4ea544a-1f0b-46f6-bab2-d67a7622a651

Returnships for Moms: Top Companies and How They Work  

https://www.forbes.com/sites/christinecarter/2025/06/10/companies-offering-returnships-for-moms-reentering-the-workforce

Vocational rehabilitation(Wikipedia)  

https://en.wikipedia.org/wiki/Vocational_rehabilitation

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