共働き世帯が増えるなかで、少しでも税負担を軽減したいと考えている家庭は多いでしょう。そんなときに活用したいのが「配偶者控除」です。これは、一定の条件を満たすと、所得税や住民税の負担が軽減される仕組みです。しかし、実際にどのように活用すればよいのか、また配偶者特別控除との違いが分かりにくいと感じる方もいるかもしれません。

本記事では、配偶者控除の仕組みを詳しく解説し、家計の負担を軽くするための活用法を紹介します。夫婦で協力しながら、税金を節約し、家計を効率よく運用していくためのポイントをお伝えします。

1. 配偶者控除とは？仕組みと節税効果を徹底解説

1.1 配偶者控除の基本的な仕組み

配偶者控除とは、納税者（夫または妻）の所得に対して、一定の条件を満たす配偶者がいる場合に適用される税制優遇措置です。これにより、所得税や住民税の課税対象となる所得が減額され、節税につながります。

適用条件としては、配偶者の年収が一定額以下であることが挙げられます。特に、配偶者がパートやアルバイトなどで働いている場合、年収の調整によって控除を受けられるかどうかが決まるため、注意が必要です。

1.2 控除額と適用される年収の基準

配偶者控除を適用するためには、配偶者の合計所得が48万円以下（給与収入のみの場合103万円以下）である必要があります。この基準を超えると、配偶者控除は適用されませんが、一定の範囲内であれば「配偶者特別控除」を受けられる可能性があります。

配偶者控除の最大額は、納税者の所得によって変わります。具体的には、納税者の合計所得が900万円以下であれば、38万円の控除が適用されます。所得が900万円を超えると、控除額が段階的に減少し、1,000万円を超えると控除が受けられなくなります。

1.3 配偶者控除がもたらす節税効果

配偶者控除を活用すると、所得税と住民税の課税対象額が減るため、結果として納める税金が減ります。例えば、所得が300万円、所得税率が10%の世帯で38万円分の配偶者控除が適用されると、年間で約3.8万円の節税効果が得られる計算になります。加えて、住民税の減額もあり、合計で約5万円程度の節税になることもあります。

2. 配偶者特別控除との違い！どちらを活用すべきか？

2.1 配偶者特別控除とは？

配偶者特別控除は、配偶者の年収が配偶者控除の上限を超えてしまった場合でも、一定の範囲内で税負担を軽減する制度です。特に、配偶者の収入が103万円を超えた場合でも、最大38万円の控除が受けられる可能性があります。

2.2 配偶者控除との違い

配偶者控除と配偶者特別控除の主な違いは、適用される年収の範囲と控除額の変動です。配偶者控除は年収103万円以下の場合に固定の控除額が適用されますが、配偶者特別控除は、年収150万円程度まで段階的に控除額が減る仕組みになっています。

2.3 どちらを選ぶべきか？

どちらの控除を活用するかは、配偶者の働き方によって変わります。もし配偶者の年収が103万円以内に収まるのであれば、配偶者控除の方が安定して適用されるため有利です。しかし、103万円を超える場合でも、配偶者特別控除を適用すれば税負担の増加を抑えられるため、働き方次第で最適な方法を選ぶ必要があります。

また、住民税の計算基準も異なるため、夫婦で収入シミュレーションを行いながら、どの働き方が最も家計にプラスになるのかを見極めることが大切です。

3. 配偶者控除を活かす働き方！年収別のシミュレーション

3.1 年収103万円以内：配偶者控除の最大活用

配偶者の年収が103万円以内であれば、配偶者控除の適用を受けられ、最大38万円の控除が適用されます。このラインを超えない範囲で働くことで、夫（または妻）の税負担を抑えながら収入を得ることが可能です。たとえば、パートタイムや短時間労働を選び、勤務時間を調整することで、控除の恩恵を最大限に活用できます。

ただし、この範囲内だと社会保険の扶養の問題も関わってくるため、勤務先の制度や加入条件を確認することが重要です。健康保険や年金の扶養に入っていれば、保険料の負担を抑えながら働くことができます。

3.2 年収103万円～150万円：配偶者特別控除の活用

年収が103万円を超えると配偶者控除は受けられませんが、配偶者特別控除が適用されます。この場合、年収150万円までは控除額が38万円とほぼ変わらず、税負担が大きく増えることはありません。

たとえば、年収110万円であっても、配偶者特別控除の恩恵を受けることで、納税者の負担が最小限に抑えられます。この範囲内であれば、働く時間を増やして収入アップを目指しつつ、税金の負担を軽減するバランスを取ることができます。

3.3 年収150万円以上：税負担と社会保険の影響を考慮

年収150万円を超えると、配偶者特別控除の控除額が徐々に減少し、年収201万円を超えると控除が完全になくなります。さらに、年収130万円を超えると、健康保険と年金の扶養から外れ、自分で社会保険料を負担する必要が出てきます。

このラインを超える場合は、あえてフルタイムに近い形で働く選択肢も考えられます。たとえば、年収200万円程度まで増やせば、手取り収入が増え、社会保険料の負担を相殺できる可能性があるため、家計全体の収支バランスを見ながら判断することが大切です。

4. 節税効果を最大化！活用すべきその他の控除・手当

4.1 住宅ローン控除と配偶者控除の併用

住宅ローンを組んでいる場合、住宅ローン控除を活用することで、さらに節税効果を高めることができます。住宅ローン控除は、年末の住宅ローン残高の一定割合が所得税から控除される制度で、夫婦で収入を分け合う形で利用することも可能です。たとえば、配偶者控除を受ける側が住宅ローン控除を適用すると、所得税の負担が減り、トータルの節税効果が高まります。

4.2 扶養控除を考慮した働き方

配偶者控除のほかにも、子どもがいる家庭であれば扶養控除を活用するといいでしょう。16歳以上の子どもがいる場合、扶養控除の適用が可能で、所得税の負担を軽減できます。

また、配偶者がパートで働く場合でも、配偶者の収入が扶養控除の範囲内であれば、家計全体の税負担を抑えながら世帯収入を増やすことが可能です。このように、控除を組み合わせることで、税負担を最小限に抑える戦略を考えることが重要です。

4.3 医療費控除の活用

年間の医療費が一定額を超える場合、医療費控除を活用することで所得税の還付を受けられます。特に、小さな子どもがいる家庭や高齢の家族と同居している場合、医療費がかさむことが多いため、しっかりと領収書を保管し、確定申告で控除を受けることが大切です。

5. まとめ

配偶者控除は、適用条件を正しく理解し、配偶者の働き方を調整することで、家計の税負担を軽減できる重要な制度です。年収103万円以内に抑えれば、配偶者控除の最大の恩恵を受けられますが、それを超えても配偶者特別控除を活用することで、一定の控除を受けられます。

こうした制度をうまく活用することで、税負担を抑えつつ、家計の収入を最大化することが可能です。ぜひ、賢い働き方と節税対策を取り入れて、より充実した生活を目指しましょう。

参考文献