
「会社の数字は税理士に任せているから大丈夫」と思っていませんか?経営者自身が財務諸表を読めるようになることは、会社の成長や資金繰りの安定に直結します。
本記事では、財務諸表を読む力が個人経営者にもたらす3つの具体的なメリットと、数字力を磨くための視点を解説します。難しい専門用語は最小限に抑え、初めての方でも「これならできそう」と思える内容なので、ぜひご覧ください。
1. 財務諸表を読む力がもたらす3つのメリット

1-1. 経営改善の「気づき」を自分で得られる
財務諸表は、経営者にとっていわば“成績表”です。売上や利益だけではなく、どの費用に偏りがあるのか、資金がどこから来てどこへ流れているのかを知ることができます。
「販管費」や「売上原価」の割合を自社で把握できれば、どの部分を見直せば利益率を高められるかが明確になります。
売上が伸びているのに利益が出ていない場合、「広告宣伝費」「外注費」「人件費」などの費用が過剰である可能性があります。財務諸表の項目を読み解くことで、数値の裏に隠れた行動の改善点が浮かび上がってきます。
ここで重要なのは、経営者自身が“数字で経営を見る視点”を持つことです。これにより、現場任せでは気づけなかった非効率が見つかり、無駄な支出を減らせるようになります。決算書には「前年対比」や「月次推移」といった変化を確認できるポイントもあります。
これを活かすことで、「人件費が前年比で15%上がっているが売上は横ばい」など、問題の兆しに早く気付けるようになるでしょう。
1-2. 顧問税理士との連携が深まり、経営判断の質が向上する
決算書を読める経営者は、税理士に対して「利益が出ているのに資金繰りが厳しい原因を知りたい」「販管費の比率を業界平均と比較してほしい」といった具体的な相談ができるようになります。
税理士の知見を経営に活かすスピードが上がり、戦略的な経営が可能になります。特にキャッシュフロー計算書を理解できるようになると、「黒字倒産」を防ぐための資金管理能力が身につきます。
損益計算書では黒字でも、実際の資金が減っていれば事業は立ち行きません。このように、数字の“意味”を理解することは、経営者としての判断力を磨く重要な土台です。税理士も数字を読み取れる社長の方が、本質的なアドバイスをしやすくなります。
意思疎通がスムーズになることで、「今は利益を圧縮するべきか」「借入をすべきか」などの判断を迅速に行えるようになるでしょう。
2. 数字力がもたらす具体的な経営効果とは?

2-1. 資金繰りの改善ができるようになる
キャッシュフロー計算書や貸借対照表を見て、「今月は仕入れ支払いが重なるので資金が足りなくなりそう」といった予測が立てられるようになります。これは経営者にとって非常に重要なスキルです。
実際、創業3年以内に廃業する企業の多くは「資金繰り」に失敗しています。利益が出ていても資金が回らないことは多々あります。月次でキャッシュの動きを確認できれば、借入のタイミングや支払い調整など、的確な対応が可能となるでしょう。
2-2. 業界水準と自社の立ち位置を理解できる
財務諸表を使えば、業界平均と比較して自社の「売上高販管費率」「自己資本比率」「流動比率」などを分析できます。売上高販管費率が30%で、同業平均が20%であれば、経費のかけすぎが明白です。
このような指標を見る視点があれば、「広告費を抑える」「外注を減らす」といった改善策が具体的になります。経費削減だけでなく「どの経費が投資対効果が高いか」にも目が向くようになり、効率的な経営に繋がりやすくなります。
2-3. 将来への投資判断がしやすくなる
財務諸表は、「今の利益」だけではなく「未来の伸びしろ」も読み取るためのヒントが詰まっています。減価償却費が少なく投資が止まっている会社は、設備の老朽化に備えた更新計画を立てることをお勧めします。
販促費を積極的にかけている会社は、売上拡大フェーズにあると予測できます。このように、財務諸表を「静的な過去の数字」ではなく、「未来へのアクション材料」として活用する視点を持つことが、経営者の意思決定力を大きく引き上げてくれるのです。
3. 数字力を高める学び方と実践ステップ

3-1. 最初は“全体像を掴む”ことから始める
まずは、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書の構造をざっくりと把握しましょう。それぞれ「何を示しているか」を知るだけで、「どこを見ればいいか」がわかります。細かい仕訳の知識は必要ありません。
損益計算書は「利益の出方」、貸借対照表は「お金の置き場所」、キャッシュフローは「実際の出入り」を見るもの。この3つがリンクしていることを理解できれば、経営判断の基盤は整います。
3-2. 毎月の数字に触れる習慣をつける
月次の試算表や損益報告を、毎月15分でも眺めるだけで「数字への抵抗感」が薄れていきます。最初はわからなくても構いません。数字と向き合う回数を増やすことで、違和感に気づけるようになります。
「今月は粗利益率が低いのに売上が高い」ことに気づけば、原価が増えた可能性があると分かります。この気づきが経営判断に直結するでしょう。
3-3. 無料リソースや学習講座を活用する
現在は、税理士事務所やクラウド会計ソフト会社が提供する無料の学習動画、資料が数多くあります。「財務諸表の読み方」「決算書の見方」「経営指標の使い方」などをテーマにした講座を、毎週1つ学ぶだけでも半年後には大きな違いになります。
「簿記3級」レベルの内容でも、実務で使える要素は非常に多く、数字を見る視点が鍛えられる可能性が高まります。
まとめ:数字力を鍛えることは「経営の武器」になる

経営者が財務諸表を読めるようになることは、単なる経理知識の習得ではありません。現状の課題を自分で把握し、改善策を自分で立案できる「経営の筋力」をつけることです。
特に、個人経営者や中小企業では、現場の数字に直接関わるからこそ数字に強くなることが生きた武器になります。まずは、「わかろうとする姿勢」からスタートし、数字と仲良くなりましょう。それが、持続可能で力強い経営の第一歩です。
参考文献
- 弥生公式サイト「決算書から読み取れる経営成績」https://www.yayoi-kk.co.jp/kaikei/oyakudachi/kessansho-yomikata/
- Gigxitブログ「初心者でもわかる財務諸表」https://gigxit.co.jp/blog/blog-16891/
- PHP人材開発「会計財務・ビジネス数字講座」https://hrd.php.co.jp/tra/detail.php?code=AKD#d0e9d87eb78fa54e47cd213ca7606442
- 名古屋総合税理士法人「決算書から得られるメリット」https://nagoya-soutax.com/20240115h/
- Canon ITS「決算書読み方基本ガイド」https://www.superstream.canon-its.co.jp/column/trend_financial-statements-basic