
経費の見直しや資金繰りの改善は、経営者や個人事業主にとって常に重要な課題です。昨今の物価上昇や光熱費高騰といった背景もあり、少しでもコストを抑えようとする動きが強まっています。そこで今、注目を集めているのが「株主優待カード」の活用です。
本来は個人投資家向けの特典とされてきた株主優待制度ですが、その中でも特に利便性の高い「優待カード」は、経営者にとっても大きなメリットがあります。業務に関連する支出を一部カバーできるうえ、社員への福利厚生としての導入も可能です。
本記事では、優待カードの基本的な仕組みと、法人や個人事業主が実際に活用する際の選び方を解説していきます。
1. 経費削減に効く優待カードとは?
株主優待カードとは、企業が自社株の保有者に対して提供する特典の一種であり、指定の店舗やサービスで使える割引・優待サービスが受けられるカードのことを指します。保有株数や保有期間など一定の条件を満たすことで発行され、使い方次第では日常的な業務コストを効果的に削減することが可能です。
例えば、飲食店を展開する上場企業が発行する食事優待カードを活用すれば、従業員とのランチミーティングや取引先との打ち合わせの際に活用することができます。また、小売業の割引カードで事務用品を購入すれば、間接費を抑えることにもつながります。さらに、交通系の優待で移動コストを削減すれば、出張や営業活動における負担も軽減されます。
このように、株主優待カードは「資金の流出を抑えながら実利を得る」という点で、経営視点における有効なツールといえるのです。とくに現金支出を極力避けたい時期には、キャッシュフローの健全化にも寄与します。
ただし、業務で利用することを前提とする以上、優待の内容が明確であり、業務関連費として会計処理しやすいものであることが望ましいでしょう。私的利用と業務利用の境界が曖昧な優待は、税務上のトラブルを招く可能性もあるため注意が必要です。
2. 法人・個人で違う?株主優待の選び方
株主優待は個人投資家向けと思われがちですが、実は法人名義でも多くの場合利用が可能です。証券会社によっては法人口座での株式保有に制限があるケースもありますが、SBI証券や楽天証券など、法人対応をしている証券会社を選べば、法人名義での保有も問題ありません。
特に注目すべきは、優待制度の中でも「長期保有優遇制度」が設けられている銘柄です。これは1年以上など一定期間株を持ち続けることで優待の内容がグレードアップする仕組みであり、安定した資産運用と実利の両立が可能になります。
法人であっても株主番号が継続されていれば、こうした長期特典を受けることができる点も見逃せません。優待を選ぶ際には、まず「実用性」を重視することが大切です。いくら利回りが高くても、日常業務で使いづらい優待では意味がありません。
例えば、全国展開している飲食チェーンの優待や、事務用品を扱う小売店の割引カードなどは、使う場面が明確で、経費として計上しやすいというメリットがあります。
また、優待内容だけでなく、取得に必要な最低株数や年間利回りもチェックしておきたいポイントです。利回りは株価や配当と合わせて総合的に見るべきですが、優待の金額に対して必要な投資額が適正であるかは、事前に確認しておくべきです。
税務処理の観点では、株主優待を業務で使った場合、会議費や福利厚生費などとして処理できますが、領収書が発行されない優待もあるため、使途を記録しておくことが重要です。
特にQUOカードやポイント還元など、現金に近い形の優待については、会計処理にグレーな部分もあるため、税理士と相談した上での活用が望ましいでしょう。
3. 2025年版!おすすめの優待カード10選
ここでは、2025年3月時点で実施されている株主優待制度の中から、個人事業主や経営者が「業務で使いやすい」「経費削減に直結する」といった観点で厳選した10銘柄をご紹介します。
いずれも日常業務に組み込みやすい実用的な内容ばかりで、利便性とコストパフォーマンスのバランスに優れていますので、ぜひ参考になさってください。
イオン(8267)
全国に店舗を展開する流通大手で、100株以上保有している方に株主優待カード(オーナーズカード)が贈られます。このカードを提示することで、買物代金の3〜7%がキャッシュバックされる仕組みです。オフィス用品や消耗品の購入、福利厚生用のお菓子や飲料の調達など、事業に密接した用途で活用できます。
すかいらーくホールディングス(3197)
ファミリーレストランを多数展開しており、6月と12月に自社グループで使える優待カードが送付されます。最低保有株数でも2,000円分の優待がもらえるため、少額から始めたい方にも向いています。ランチミーティングや打ち合わせ時の会議費を浮かせるのに最適です。
トリドールホールディングス(3397)
こちらの優待カードは、「丸亀製麺」で知られる企業で、3月と9月に株主優待カードを配布しています。飲食費の一部をまかなうことで、月々の交際費を圧縮できます。
良品計画(7453)
無印良品ブランドで知られ、オフィスでも利用頻度の高い日用品や備品が豊富です。株主には買物時に7%割引が適用される優待カードが提供され、消耗品をまとめ買いする際に効果を発揮します。
物語コーポレーション(3097)
こちらの優待カードは、焼肉店やラーメン店などで使えて幅広い飲食シーンに対応可能です。
王将フードサービス(9936)
こちらの優待カードは、中華料理店「餃子の王将」で利用可能です。食事券を提供しており、社員食としての活用にも適しています。
コロワイド(7616)
年に2回、1万円ずつの優待ポイントが発行され、グループ内の様々な店舗で使用可能です。福利厚生としての活用に加え、社内イベントやスタッフ慰労などにも使いやすい点が魅力です。
松屋(8237)
こちらは、10%割引される優待カードで、小売店で利用できる実用的なカードです。
近鉄百貨店(8244)
こちらの優待カードも、優待クーポンなどがあり便利です。高級文具や贈答品など、対外的な取引に関わる支出をカバーできます。
クスリのアオキホールディングス(3549)
ドラッグストア系の割引カードが用意されており、衛生用品や医薬品の調達コストを抑えるのに役立ちます。
いずれも、優待の対象となる保有株数は100株からスタートするものが多く、少額の投資から導入可能です。保有期間によって内容がグレードアップする銘柄もあるため、長期視点での運用も検討しておくと良いでしょう。
まとめ
株主優待カードは、これまで一般消費者向けのお得制度と見なされがちでしたが、経営者や個人事業主にとっても非常に実用的な資産活用ツールです。
経費削減という観点から見ると、飲食代や交通費、備品費など、事業運営に不可欠な支出を一部カバーできるため、キャッシュフローを改善しながら事業効率の向上も期待できます。法人名義でも多くの優待が受け取れるほか、選び方次第では税務上のメリットも享受できます。
ただし、私的利用との区別や適切な会計処理が求められるため、制度の仕組みを理解したうえでの導入が重要です。2025年現在、優待カードを発行している企業は多岐にわたり、比較的少額の投資で導入できるものも増えています。
自社にとって「使いやすく、経費に換算できる」優待を見極めて、長期的なコストコントロール戦略の一環として取り入れてみてはいかがでしょうか。
参考文献
- 株主優待カードがもらえる銘柄一覧|NET-IR(野村インベスター・リレーションズ)
https://www.net-ir.ne.jp - みんかぶ「株主優待人気ランキング」https://minkabu.jp/yutai/popular_ranking
- SBI証券 https://www.sbisec.co.jp
- 税理士ドットコム「株主優待の税務処理」 https://www.zeiri4.com