キャリアアップを目指す会社員にとって、「スキルアップ」や「人脈づくり」ばかりが注目されがちですが、実は見落とされがちな強力な味方があります。それが「社内保障制度」です。給与や勤務時間などの目に見える条件にばかり目を向けていると、社内に整備された制度の価値に気づかずにキャリアの成長機会を逃してしまうかもしれません。
現代の企業では、社内公募制度や異動希望申請、等級制度、研修支援、メンター制度、副業支援など、多様な社内制度が導入されています。これらは単なる福利厚生ではなく、個人のキャリア形成をサポートする「資産」として活用できるのです。
本記事では、会社員が知っておくべき社内保障制度の種類と、その制度をどう活かしてキャリアを構築していくかについて、具体的な事例やポイントとともに解説します。制度は与えられるものではなく、使いこなすことで本当の力になります。あなたの職場にも、まだ眠っている制度の宝があるかもしれません。
1. なぜ今、社内保障制度が注目されるのか
かつての日本企業では、終身雇用や年功序列に基づいた働き方が一般的で、社員は企業に守られながら決まったキャリアを歩むことができました。しかし今では、働き方改革や人材の流動性が進み、個人が自らキャリアを切り拓く時代へと変化しています。こうした背景のもと、企業は社員一人ひとりの成長を支える仕組みづくりを加速中です。
たとえば、ナリコマグループでは、社員がマネジメント職と専門職を柔軟に行き来できる制度を整え、キャリアの自由度を高めています。また、KPMGコンサルティングでは、社員の意欲とプロジェクトの相性を重視したキャリア開発を推進しています。
さらに、社内公募制度や副業支援、越境学習など、社員の挑戦を後押しする制度も増えており、社内保障制度は「守る仕組み」から「成長を後押しする装置」へと進化しているのです。この変化に対応し、自ら制度を理解し活用できる人材こそが、これからの時代において真の強みを手に入れることができます。
2. 社内制度のタイプとキャリアへの影響
一口に社内保障制度といっても、その内容は多岐にわたります。制度の目的も福利厚生に留まらず、社員のキャリア形成やスキル向上を目的としたものが増加しています。ここでは代表的な制度と、それぞれがキャリアにどのように役立つのかを紹介します。
2-1.社内公募制度
この制度では、特定のポジションやプロジェクトに対して、社員が自ら応募できます。キャリアの選択肢を広げるだけでなく、自分の意志で異動や転職のような経験ができる点が魅力です。Coral Capitalの分析でも、社内公募制度を活用した社員は職務満足度が高く、離職率も低い傾向にあると報告されています。
2-2.等級制度や評価制度
等級制度や評価制度も重要です。先ほども挙げましたが、ナリコマグループでは、マネジメント職とスペシャリスト職の間を自由に行き来できる制度を導入しています。これにより、管理職を目指さない人でも昇格やスキル評価の対象となり、多様なキャリアパスが実現します。
2-3.研修制度や学習支援制度
研修制度や学習支援制度も見逃せません。トレノケート社のブログでは、メンター制度やeラーニング、越境学習など、幅広い学びの支援が紹介されています。これらは単なる研修ではなく、自分の将来像に合わせて選択できる「成長支援」として機能します。
2-4.その他の精度
他にも副業を支援する制度や、社内ベンチャー制度、キャリアコーチング制度なども登場しています。これらは企業が社員の多様な生き方や働き方を支援する姿勢の表れであり、制度をうまく使えば自分らしいキャリア設計が可能になります。
3. 制度を活かすキャリア自律スキルとは
社内保障制度が整っていても、それを活かせるかどうかは個人の「キャリア自律」にかかっています。キャリア自律とは、自分の働き方や将来を主体的に設計・実行する力のこと。ここでは、そのために必要なスキルを紹介します。
まず大切なのは自己分析です。自分がどのような強みを持ち、何に価値を感じ、どのような働き方をしたいのかを理解することが出発点になります。たとえばKPMGコンサルティングでは、入社時だけでなく、定期的にキャリアレビューを実施し、社員の目標と業務のすり合わせを行っています。
目標設定のスキルも欠かせません。単に「昇進したい」と願うだけでなく、どんな職種でどのスキルを身につけたいのかを明確にすることで、制度を選択・活用しやすくなります。
さらに制度の調べ方や相談の仕方、申請のタイミングといった実務スキルも重要です。社内サイトをチェックする、人事部に直接相談する、制度を使った先輩に話を聞くといった行動が、キャリアの可能性を大きく広げてくれます。
キャリア自律を実現するためには、制度を「知る→考える→動く」という3ステップが有効です。まず「知る」段階では、自社のイントラネットや社内報、説明会などを通じて制度を確認しましょう。次に「考える」段階では、自己分析をもとに「どの制度が自分の目標と一致するか」を見極めます。そして「動く」段階では、直属の上司への相談や人事面談での意思表明を行いましょう。
4. 成功企業の事例に学ぶ活用のポイント
理論だけでなく、実際に制度を使いこなしている企業の事例を知ることで、活用のヒントが得られます。ここではいくつか事例を紹介します。
まずナリコマグループでは、社員の適性に合わせてキャリアを柔軟に設計できる等級制度を整備しています。現場志向の社員にはスペシャリスト職、将来的にマネジメントを目指す社員には管理職ルートが用意され、個人の成長に応じたキャリア展開が可能です。
次にKPMGコンサルティングでは、プロジェクトベースでの配属が主流です。新しいプロジェクトに参加することで、自然とスキルが高まり、異なる業界や職種を横断する経験が積める仕組みになっています。
Tsudoi活躍研究所が紹介する企業事例では、ジョブ型人事制度を導入し、社員に具体的な職務とスキル要件を提示しています。この明確さが社員のキャリア計画に役立ち、結果として職務満足度の向上にもつながっているそうです。
さらに、自社に制度があるかどうか不明な場合は、次のような観点で制度の「見つけ方」をチェックしてみてください。社内ポータルに「人材育成」や「福利厚生」の項目がないか確認し、社内報の特集や人事部への相談もヒントになります。
5. まとめ
社内保障制度は、単なる福利厚生ではなく、キャリアを切り拓く強力なツールです。制度の存在に気づき、自分の目標に合わせて選び取り、行動につなげることで、あなたの働き方はより自由で豊かになるでしょう。変化の激しい時代だからこそ、自分の成長を企業の制度とともに支えていく視点が求められます。まずは「自分の会社にある制度」を調べることから、キャリアの第一歩を踏み出しましょう。
参考文献
– 厚生労働省｜社員の自律的なキャリア形成を支援する企業の先進事例
– Coral Capital｜漠然としたキャリアの不安に対峙する技術
– Trainocate ブログ｜キャリア自律とは？個人と企業が共に成長する方法と成功事例
– HR NOTE｜キャリア自律に向けた社内公募・異動希望制度の事例（上）
– ナリコマグループ｜社員の成長を支える新しい人事制度
– KPMGコンサルティング 採用ブログ｜キャリア～Vol.3
– Tsudoi 活躍研究所｜「先が見えない」という社員のキャリア形成
