収入が安定しづらい自営業者にとって、「万が一に備えるお金の仕組みづくり」は暮らしの安心を左右する重要なテーマではないでしょうか?
仕事の繁閑による収入の波や、病気・ケガによる休業、老後資金の不安などに備える手段として注目されているのが「投資信託」です。
特に「毎月少額からはじめられる積立型の投資信託」は、変動のある収入でも無理なく継続でき、時間を味方につけた長期の資産形成ができます。さらに、積立NISAやiDeCoといった制度と組み合わせることで、節税しながら老後資金や生活費の準備も進められます。
この記事では、「収入は安定しないけれど、将来に備えたい」と考える自営業者に向けて、投資信託を活用したセーフティネットのつくり方をわかりやすく解説します。

1. 収入が不安定な自営業者の共通課題とは
1-1. 「稼ぐ」と「守る」は両立できる?
自営業やフリーランスとして働く人々は、自由度の高い働き方を享受する一方で、「毎月の収入が安定しない」「休めば収入がゼロになる」「年金が不安」など、生活の土台に不安を抱えがちです。
会社員のように毎月決まった給与が入る仕組みではないため、想定外の支出や長期の収入ダウンがそのまま生活へのダメージになります。
こうした背景から、「とにかく稼ぐ」「今を乗り切る」ことに意識が向き、資産形成や将来への備えが後回しになりがちです。
しかし、収入が不安定だからこそ、「稼ぐ」と同じくらい「守る」「備える」ことが大切です。安定したお金の流れや“生活の土台”を意識的に整えることで、仕事にも集中しやすくなります。
1-2. 現実に直面する3つの不安要素
1つ目は「突発的な出費」への脆弱さです。家電の買い替え、急な医療費、親の介護など、生活には予想外の出費がつきものです。こうした支出に備える緊急予備資金がないと、カードローンや一時的な借金に頼らざるを得ません。
2つ目は「長期的な収入減少リスク」です。体調不良、業界の需要減少、競合の出現などによって、収入が長期的に落ち込むリスクは誰にでも起こり得ます。特に単一のスキルや収入源に頼っている場合、ダメージは大きくなります。
3つ目は「老後の生活設計」です。自営業者は厚生年金に加入していないため、国民年金だけでは将来的な生活資金が不足しがちです。公的年金の上乗せや私的年金づくりが必須となりますが、それを日々の生活の中で準備するのは簡単ではありません。
これらの不安に対して、「投資信託」を使った積立投資という仕組みは、将来に向けた備えを“自動化”しながら、日常の生活リスクもカバーする方法として注目されています。
2. 投資信託が“生活の土台”になる理由
2-1. 「貯金」では対応しきれないリスクとは
自営業者にとって貯金は重要な備えですが、それだけでは「時間」と「インフレ」のリスクに対応しきれないことがあります。たとえば、100万円を銀行に預けていても、数年後に物価が上昇すれば実質的な価値は目減りします。低金利が続く現代では、利息だけで資産を守るのは困難です。
その点、投資信託は資産を複数の株式や債券などに分散して運用する仕組みで、長期的にはインフレに対抗しうる「成長の恩恵」を受けることができます。とくに「インデックス型投資信託」はコストが低く、長期での資産形成に向いており、専門知識がなくても運用可能な点で初心者にも人気です。
2-2. 分配金や売却益が生活費の一部に
投資信託は、「値上がり益(キャピタルゲイン)」だけでなく、「分配金(インカムゲイン)」という形で定期的に収益を得られる商品もあります。たとえば、バランス型ファンドや債券重視型ファンドでは、年数回の分配金を受け取りながら、生活費の補填に充てるという使い方が可能です。
自営業者にとっては、仕事の波や繁忙期の差に左右されず、「毎月一定の金額が入ってくる」という状況が心理的にも大きな支えになります。もちろん元本保証はありませんが、リスクを抑えた運用方法を選べば、安定収入に近い形で活用することもできます。
3. 制度を活かす!NISA・iDeCoの使い分け
3-1. 自営業者に有利な制度とは
たとえば、30代の個人事業主が月3万円を投資に回す場合、「積立NISAに2万円、iDeCoに1万円」と割り振ることで、流動性と節税効果を両立できます。iDeCoでは年間12万円の拠出が全額所得控除となり、所得税と住民税が20%の人なら2万4千円の節税になります。積立NISAでは、毎月の積立を非課税で運用しつつ、必要があれば途中解約も可能です。
特に、年収が不安定な年は積立NISAの比率を増やす、収入が好調な年はiDeCoをフル活用する、というように制度を柔軟に使い分ける意識が大切です。
「今年はiDeCoの掛金を最小限にして、生活費に余裕を持たせよう」「来年は確定申告で控除額を増やしたいから、iDeCoに厚めに拠出しよう」といった調整が、自営業者ならではの自由度を活かす戦略となります。
3-2. 節税×資産形成で“守り”を強化
制度の本質は、「日々の収入に頼りすぎないもう一つの柱をつくること」にあります。税制優遇の恩恵を受けつつ、投資信託で運用すれば、複利の力を最大限活かすことができます。
また、自営業者は確定申告を通じて節税効果を実感しやすいという利点があります。iDeCoの掛金を「小規模企業共済」と併用することで、さらに控除額を増やすことも可能です。税務的に見ても、投資信託を取り巻く制度は自営業者にとって強力な守りの武器となるでしょう。
4. 安心につながる積立投資の始め方
4-1. 仕組み化こそ最強のリスク対策
「売上が不安定な自分に、投資なんて無理だ」と思っていませんか? 実は、1日約300円、つまり月1万円でも、20年後には200万円以上の資産を築ける可能性があります。これは平均利回り3〜4%の投資信託に積立した場合のシミュレーションです。
金額の大小よりも大切なのは「やめずに続ける仕組み」です。口座を分けて生活費と投資用資金を明確に分けておくだけで、「いつの間にか増えていた」という感覚が生まれます。特に自営業者は、気分や仕事の波に左右されない“自動化”が成果につながります。
自動積立設定をしておけば、忘れていても毎月同じ金額が投資信託に回され、長期的な資産形成に必要な「習慣化」も自然と身につきます。現金のままだとつい使ってしまうという方にも有効な手段です。
4-2. 銀行より証券会社でスタートを
証券口座開設の手続きは思った以上に簡単で、スマホ一つで完結できます。SBI証券や楽天証券などのネット証券では、手数料の安い「eMAXIS Slimシリーズ」「楽天・全米株式インデックス・ファンド」などが人気です。
ファンド選びに迷ったら、「信託報酬が低いこと」「インデックス型であること」「長期運用向きの商品であること」を基準に選びましょう。特に“積立NISA対応”ファンドは金融庁の基準をクリアしており、初心者でも安心して利用できます。
また、各社のシミュレーションツールを使えば、毎月の積立額と将来資産の目安を可視化できるため、「なんとなく不安」で止まっていた人も一歩踏み出しやすくなります。
5. まとめ
収入の波にさらされやすい自営業者にとって、投資信託は「将来への備え」と「日々の安心感」を支える心強い味方です。積立NISAやiDeCoを活用すれば、節税しながら少しずつ資産を増やすことができます。毎月自動で積み立てる仕組みを持つことで、収入の不安に振り回されず、心に余裕を持った働き方を実現可能です。
参考文献
- “収入が安定しない…”自営業のための手堅い資産運用法|MoneyForwardメディア
https://media.moneyforward.com/articles/1329 - 自営業者と自助努力の資産形成|第一生命 Mirashiru
https://mirashiru.dai-ichi-life.co.jp/article/1208956 - 自営業者が優先すべきは「つみたてNISA」「iDeCo」|DIAMOND online
https://diamond.jp/zai/articles/-/177183 - 自営業者とインデックス投資|投資信託クリニック
https://toshin-clinic.com/blog/20221210-16621 - フリーランスも節税と将来の備えを!|Y‑Create
https://www.y-create.co.jp/forcreator/setsuzei_toushi - 個人事業主がNISAを活用するポイントとは?|Taxnap
https://taxnap.jp/nisa-selfemployed-guide - フリーランスとセーフティネットの違い|freenance MAG
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