共働き世帯にとって、マイホーム購入は「家族の安心」と「将来の資産形成」を同時に実現する大きな決断です。しかし、住宅ローンは長期にわたり家計に影響するため、勢いで購入すると日々の生活費や教育費にしわ寄せが生じることがあります。特に30〜45歳の世帯は、妊娠・出産・進学・転職など、収入と支出が変動しやすい時期に当たります。購入するタイミングと返済計画を誤ると、「せっかくマイホームを持ったのに、生活が窮屈になってしまった」という状況に陥りかねません。
一方、家計の構造や働き方の見通し、ライフイベントを整理したうえで計画すれば、マイホームは無理なく実現できます。本記事では、共働き夫婦が家計を圧迫しないための購入タイミングと判断基準を、参考事例やファイナンシャルプランナーの視点を踏まえて解説します。

1. 共働き夫婦がマイホーム購入で直面しやすい家計の落とし穴
共働き世帯は世帯収入が安定しているように見えますが、実際には収入が変動するリスクを抱えています。特に出産・育休・子の病気などにより、どちらか一方の収入が一時的に減少するケースは珍しくありません。住宅ローンを世帯収入の上限で組んでしまうと、収入減の期間が長引いた際に家計の負担が急激に増します。
また、住宅購入は建物価格だけでなく、諸費用・固定資産税・修繕費・保険料・家具家電の買い替えなど、想定より支出が増える傾向があります。ローン返済に気を取られ、その他の支払いや貯蓄が十分に確保できない状態が続くと、生活の余裕が失われます。
さらに、物件選びにおいて「広さ」や「立地」の理想を追求しすぎることが、予算オーバーにつながることもあります。大切なのは「今」ではなく、「10年後も無理なく続けられる生活水準かどうか」という視点です。家は資産であると同時に、日常生活のベースでもあるため、支出増が生活の質を損なわないバランスが必要です。
2. 購入タイミングを見極めるための3つの観点(収入計画・ライフイベント・支出バランス)
住宅購入を検討する際は、以下の三つの要素を整理することが効果的です。
まず、収入計画です。現在だけでなく、5年・10年先の働き方の展望を夫婦で共有します。転職希望、管理職昇格、フリーランスへの転身、副業の拡大など、人生の選択肢は変化し続けます。将来の収入が上下する可能性を踏まえたうえで、住宅ローンをコントロールすることが求められます。
次に、ライフイベントの時期です。保育園・小学校の通学動線、親の介護、子どもの習い事の場所など、家族の生活は年単位で変化します。例えば、出産前に家を買う夫婦もいれば、子どもの成長に合わせて生活圏を見直してから購入する夫婦もいます。大切なのは「自分たちの生活導線がどの時期に最も明確になるか」を見極めることです。
最後に、支出バランスの可視化です。家計簿アプリを用いて固定費と変動費を整理し、住宅ローン返済後も積立・教育費・余暇費が確保できる状態を目指します。購入は「返済できる額」ではなく「余白を残せる額」を基準に考えることが安心につながります。
3. 無理なく返済できる住宅ローン設計とシミュレーションのポイント
住宅ローンの返済比率は、世帯年収の20〜25%を目安にすると無理のない水準に収まりやすくなります。育休や時短勤務で収入が減少しても返済が続けられるかを基準に設定することが重要です。
返済期間の設定においては、定年後も返済が続くかどうかがポイントです。返済期間を長くすれば月々の負担は減りますが、総額は増えます。一方、短縮すれば家計への圧力が高まります。例えば、繰り上げ返済を前提に「まず長めに組み、生活が安定すれば返済期間を短縮する」という選択肢もあります。
金利タイプは、将来の収入の安定性に照らして検討します。変動金利は低金利の恩恵を受けやすい一方、金利上昇時の負担増を想定しなければなりません。固定金利は返済額が読みやすく、家計管理がしやすくなります。どちらを選ぶかは「安心を優先するか」「コストを優先するか」の価値観によって決まります。
複数の金融機関やシミュレーションサイトで、育休中や教育費ピーク時の収支を比較することで、返済の負担が明確になります。数字に基づく検討は、安心と納得感をもたらすでしょう。
4. 実例から学ぶ「世帯年収500〜1,000万円」共働き家庭のマイホーム戦略
世帯年収730万円の共働き家庭(SUUMO掲載事例)では、住宅ローンを上限額ではなく「片方の収入でも返済可能な水準」に抑えました。その結果、育休期間中にも貯蓄の減少を防ぐことができ、家計への不安を感じずに生活を続けられています。夫婦のどちらかが働けなくなる可能性を前提としてシミュレーションしたことが、安心して返済を継続できるポイントとなりました。
また、別の家庭では、第一子誕生後に住まいを検討したことで、通園や通勤の動線、買い物環境、家事のしやすさといった日常生活のリアルな条件が明確になりました。実際に育児が始まってからの生活リズムを踏まえて物件選びを行ったため、「実生活にフィットする家」につながり、夫婦の家事・育児分担もスムーズになったといいます。
これらの例に共通しているのは、「収入の多さ」でなく「生活を中心に据えた意思決定」が行われている点です。理想の広さや設備だけで判断するのではなく、「自分たちがどのように暮らしたいか」という価値観の共有が、無理のないマイホーム取得につながります。物件そのものや購入時期に絶対的な正解はありませんが、家族の時間・働き方・育児の負担感といった生活軸から計画を立てることが、後悔の少ない住まい選びに結びつきます。
まとめ
共働き夫婦がマイホームを無理なく購入するためには、収入やライフイベントの変化を前提とした計画が重要です。住宅ローンは、借りられる額ではなく余裕を残せる額で設計することで、子育てや将来の資産形成にも柔軟性を持てます。購入の最適なタイミングは家庭によって異なりますが、生活導線や働き方を夫婦で丁寧に話し合うことで、自分たちに合った判断がしやすくなります。焦らず、長期視点で「暮らしと経済が両立する住まい」を目指していきましょう。
参考文献
ミラシル by 第一生命「FPが教える、家を買う理想的なタイミング」
https://mirashiru.dai-ichi-life.co.jp/article/1271216/
コープ共済「共働き夫婦がマイホーム購入時に気を付けたい3つのポイント」
https://coopkyosai.coop/about/lpa/column/fp_200831_01.html
セカンドエム「共働き夫婦の住宅購入で成功する5つのポイント」
https://www.second-em.com/blog/entry-653456/
SUUMO「共働き世帯の住宅購入 リアル家計簿徹底解剖」
https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/ms_shinchiku/ms_data/ms_kakeibo/
リノベる。「家を買うタイミングはいつ?」
https://www.renoveru.jp/journal/11795/


