パートやアルバイトとして働く主婦にとって、「健康保険」や「年金」の制度は、家計だけでなく将来の生活にも大きく影響を与えます。特に「年収の壁」と呼ばれる所得制限や、扶養に入る・外れるといった選択は、実は保険制度と密接に関係しています。なんとなく「扶養内で働いたほうが得」というイメージを持っている方も多いかもしれませんが、働き方によって保障の内容や老後の年金額が変わることは、意外と知られていません。
2022年以降、社会保険の適用拡大が段階的に進んでおり、短時間労働でも健康保険や厚生年金に加入できる対象が広がっています。これにより、「少し多く働くだけで扶養から外れるのが損」という考えが必ずしも当てはまらなくなっています。
本記事では、主婦にとって重要な健康保険と年金の基本的な仕組みと、収入や働き方に応じた加入パターンを解説します。さらに、制度を活かして損をしないための働き方や、将来に向けた備え方についてもわかりやすくまとめました。

1. 主婦の働き方に影響する保険と年金
1-1 社会保険の条件とメリット・デメリット
主婦の働き方を考えるうえで、保険と年金の制度は重要なポイントです。まず「扶養内で働く」という選択には、税制と社会保険の2つの観点があります。税制上では、年収が103万円以下であれば配偶者控除、150万円以下であれば配偶者特別控除の対象となり、世帯全体の税負担を軽くすることが可能です。
一方、社会保険上では年収130万円未満であれば、健康保険や年金に自ら加入せず、配偶者の扶養に入ることができます。これにより保険料の支払いは不要となり、手取り額が高くなるのがメリットです。しかしその反面、傷病手当金や出産手当金などの保障は受けられず、将来の年金額も低くなる傾向にあります。
1-2 短時間勤務でも社会保険加入が必要なケースとは
制度改正によって、短時間勤務でも一定の条件を満たすと、自ら社会保険に加入しなければならない場合があります。たとえば、週20時間以上勤務し、月収が8.8万円以上、勤務先の従業員数が51人以上などの条件を満たすと、健康保険と厚生年金への加入が義務づけられます。
2024年10月からはさらに対象が拡大されています。このようなケースでは保険料が発生しますが、病気や出産に対する保障が受けられ、老後の年金も手厚くなるというのが利点です。収入が一定水準に達していれば、手取りがやや減っても長期的に見て得になる可能性もあります。
1-3 全額自己負担による経済的負担と年金の確保
個人事業主やフリーランスとして働く場合、あるいはパートであっても社会保険の条件を満たさない場合は、自ら国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。この場合は全額自己負担となるため、経済的負担は大きくなりますが、老後の年金受給権は確保されます。
副業や起業によって年収が130万円を超えた場合も、同様の扱いとなることが多く、小規模企業共済やiDeCoなどの制度を活用することで、将来への備えを効率的に進めることが可能です。
2. 扶養内と扶養外の違いを知ろう
主婦の働き方を考えるうえで重要なのが、いわゆる「年収の壁」です。代表的なものに「103万円」「106万円」「130万円」「150万円」のラインが挙げられます。たとえば103万円を超えると所得税が発生し、130万円を超えると社会保険上の扶養から外れる可能性があります。150万円までは配偶者特別控除が段階的に適用されるため、控除額に影響するのもポイントです。扶養内で働くと保険料を払わずに済み、手取りが多くなる利点がありますが、健康保険や年金などの保障はなくなります。
逆に、扶養外になると保険料の負担は増えますが、出産手当金や将来の年金などの保障が手厚くなります。たとえば時給1,200円で週5日・5時間働くと、年収は約144万円となり扶養を外れますが、社会保険に加入できるため安心材料も増えます。今の収入だけでなく、将来に備える視点で損得を見極めることが大切です。
3. 年収別に見る最適な働き方とは
年収によって働き方の最適解は変わります。たとえば年収100万円未満であれば、税金がかからず配偶者控除も最大限に受けられるため、扶養内で安心して働けます。130万円未満の範囲では、社会保険料を負担せずに収入を増やせる一方で、106万円を超えると勤務先によっては社会保険の加入義務が生じることもあるため注意が必要です。130万円を超えると扶養を外れますが、出産手当金や年金額が増えるなど保障面での恩恵があります。ライフスタイルに合った選択をしましょう。
4. 将来に備える保険と年金の選択肢
社会保険の対象が広がり、週20時間以上・月収8.8万円以上であれば、一定規模の企業で社会保険に加入できるようになりました。2024年10月からはこの条件も緩和される予定です。一方、自営業やフリーランスの人は、国民健康保険と国民年金に加入し、iDeCoや小規模企業共済などを活用して、自ら将来の保障を準備することが大切です。
5. まとめ
主婦の働き方は、健康保険と年金の制度によって大きく左右されます。扶養内で保険料負担を避けるか、あえて加入して保障を充実させるか、それぞれにメリットとデメリットがあります。年収別のラインを理解し、自分と家族のライフスタイルや将来のビジョンに合った選択をすることが大切です。制度を正しく知り、賢く働くことで、今も将来も安心できる暮らしを築いていきましょう。
参考文献
- 日本年金機構「パート・アルバイトの皆さまへ」
https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/tekiyokakudai_kojin.html - Townwork「社会保険の加入条件とは?」
https://townwork.net/magazine/knowhow/sinsurance/42850/ - しゅふJOB「2025年最新版 社会保険の加入範囲が広がる!」
https://part.shufu-job.jp/news/knowledge/14702/ - All About「専業主婦とパートがもらえる年金の違いとは?」
https://allabout.co.jp/gm/gc/478944/ - Gov‑online「社会保険の加入対象が広がる」
https://www.gov-online.go.jp/article/202408/entry-6338.html - Money Forward Biz「パートの社会保険加入条件とは?」
https://biz.moneyforward.com/payroll/basic/58374/ - Hoken-ch「配偶者の扶養に入るか外れるか?」
https://hokench.com/article/retirement/429/ - Romsearch「130万の壁とは?」
https://romsearch.officestation.jp/shakaihoken/kanyu/40173