転職やキャリアチェンジを考える人にとって、会社を辞めることは大きな決断です。しかし、退職後の生活をスムーズに進めるためには、社会保障の仕組みを事前に理解しておくことが重要です。雇用保険や健康保険、年金制度など、知っておくべきポイントを押さえておくことで、安心して新たなキャリアへ進むことができます。本記事では、退職前に必ず知っておくべき社会保障の基本と、失業保険の受給条件について詳しく解説します。

1. 会社を辞める前に知るべき社会保障の基本
会社を辞める際には、社会保障制度の変更が必要になるため、退職後の手続きを事前に理解しておくことが大切です。特に重要なのは、雇用保険、健康保険、年金の3つです。これらの手続きを怠ると、生活に大きな影響が出る可能性があります。
1.1 雇用保険(失業保険)とは?
雇用保険は、失業時に一定期間、基本手当(失業給付)を受け取ることができる制度です。退職後、次の仕事を見つけるまでの生活を支えるための重要な仕組みです。受給するためには、雇用保険の加入期間や求職活動の実績が求められるため、詳細を理解しておくことが重要です。
1.2 健康保険の選択肢
退職後も医療費負担を抑えるために、健康保険の継続が必要です。主に以下の3つの選択肢があります。
1つ目は任意継続保険です。会社で加入していた健康保険を最長2年間継続可能。退職後20日以内に申請が必要です。2つ目は国民健康保険です。住んでいる自治体の健康保険に加入し、前年の所得に応じて保険料が決定します。3つ目は家族の扶養に入ることです。配偶者や親の健康保険に加入可能です。ただし、一定の収入制限があります。
1.3 年金の手続き
会社を辞めると厚生年金から国民年金に切り替える必要があります。これを怠ると、将来の年金受給額が減る可能性があります。手続きは退職後14日以内に市区町村の役所で行いましょう。収入がない場合は、免除や減額制度も利用できるため、しっかりと確認しておくことが大切です。
2. 失業保険の仕組みと受給条件を理解しよう
失業保険(雇用保険)は、会社を辞めた後の生活を支える大切な制度です。特に、転職活動中の金銭的な支えとなるため、仕組みや申請方法を理解しておきましょう。
2.1 失業保険の受給条件
失業保険を受け取るには、条件を満たす必要があります。
退職前の2年間に通算12ヶ月以上、雇用保険に加入していたこと(会社都合退職の場合は6ヶ月以上)、ハローワークに求職の申し込みをし、積極的に仕事を探していること、健康状態や家庭の事情により、すぐに就職できる状態であることが必要です。
2.2 受給までの流れ
失業保険を受給するためには、以下のステップを踏む必要があります。
- 離職票を受け取る(退職後に会社から受領)
- ハローワークで求職申し込みをする
- 受給資格の決定と説明会への参加
- 待機期間(7日間)
- 給付制限期間(自己都合退職の場合は2〜3ヶ月)
- 基本手当の受給開始
3. 退職後の健康保険と年金の手続きとは?
会社を退職すると、それまで会社が管理していた健康保険と年金の手続きを自分で行う必要があります。これらの手続きを怠ると、無保険状態や年金の未納となり、将来の生活に大きな影響を及ぼします。スムーズに次のステップへ進むためにも、健康保険と年金の手続きについて理解し、適切に対応しましょう。
3.1 退職後の健康保険の選択肢と手続き
会社を辞めると、それまで加入していた健康保険(社会保険)の資格を失います。退職後も医療費負担を抑えるために、以下の3つの選択肢から適したものを選びましょう。
1つ目は任意継続健康保険です。会社で加入していた健康保険を最大2年間継続できる制度です。継続することで、医療機関での自己負担割合が変わらず、これまでと同じ条件で保険を利用できるメリットがあります。
退職後20日以内に申請が必要で、退職前に2ヶ月以上の被保険者期間があることが条件です。保険料は会社が負担していた分も自己負担となるため、在職時の約2倍です。
※健康状態が不安な人や、家族を扶養している場合には、有利な選択肢です。
2つ目は国民健康保険です。退職後、企業の健康保険に加入できない場合、住んでいる市区町村の国民健康保険へ加入することになります。保険料は前年の所得をもとに計算されるため、無収入になると保険料を軽減できるケースもあります。
退職後14日以内に市区町村の役所で手続きが必要で、保険料は前年の所得によって変動します(自治体ごとに異なる)。メリットは、無収入の場合、減免制度や分割払いの相談ができることです。
3つ目は家族の扶養に入ることです。退職後の収入が年間130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)であれば、家族の健康保険に扶養として加入できます。扶養に入れば保険料の負担がなくなるため、経済的に最もメリットが大きい選択肢です。
特徴として、退職後すぐに配偶者の勤務先に相談する必要があります。扶養される側の収入が一定額以下であることが加入条件で、保険料ゼロで健康保険に加入できることがメリットです。
健康保険の選び方のポイントとして、すぐに次の仕事が決まる場合は扶養に入るのがベスト(条件を満たせば)。転職まで時間がかかる場合は任意継続 or 国民健康保険を検討。扶養に入れない&保険料負担を抑えたい場合は国民健康保険の減免制度を活用しましょう。
3.2 退職後の年金の手続きと免除制度
会社員として働いていたときは厚生年金に加入していましたが、退職後は国民年金に切り替える必要があります。手続きを怠ると未納期間が発生し、将来の年金受給額が減る可能性があるため、速やかに手続きを進めましょう。
まずは国民年金への切り替え手続きを解説します。退職後14日以内に市区町村の役所で申請が必要です。納付書払い・口座振替・クレジットカード払いが選べます。2024年度の国民年金保険料は月額16,980円です。
次に紹介するのは、免除・猶予制度の活用です。収入がない場合、年金の支払いが難しくなることがあります。そのような場合は、免除・猶予制度を活用し、未納状態を回避しましょう。
全額免除制度を活用すれば、前年の所得が一定額以下の場合、保険料の全額または一部を免除できます。免除期間中でも、老齢基礎年金の受給資格期間にはカウントされるため、未納よりも影響が少ないです。
また、30歳未満で収入が少ない場合、若年者納付猶予制度を活用し、一時的に支払いを猶予してもらえます。将来的に追納すれば、年金額への影響を軽減できます。
年金の手続きのポイントは、すぐに転職しない場合は国民年金へ切り替え。収入がない・支払いが難しい場合は免除・猶予制度を申請する。将来のため、最低限、全額免除や追納の手続きを行うことで未納状態にしないことが大切です。
まとめ
会社を辞めると、健康保険や年金の手続きを自分で行わなければなりません。
退職後の社会保障の手続きをスムーズに行うことで、無駄な支出を抑え、安心して次のキャリアに進むことができます。退職を決めたら、すぐに健康保険と年金の手続きを進めることが大切です。準備をしっかり整え、スムーズな転職・再就職を目指しましょう。
参考文献
- 厚生労働省「雇用保険制度」: https://www.mhlw.go.jp
- 日本年金機構「国民年金の手続き」: https://www.nenkin.go.jp