個人事業主にとって「売上を上げる」ことはもちろん重要ですが、それと同じくらい見逃せないのが「固定費の見直し」です。

近年では、投資や資産運用への関心が高まりつつありますが、まずは日々の支出を効率化することが、将来への第一歩として重要な意味を持ちます。

中でも、固定費は一度見直すだけで、毎月の支出に大きなインパクトを与える可能性があるにも関わらず、多くの個人事業主が後回しにしてしまいがちなポイントです。

日常業務に追われていると、無駄な支出を把握し、改善に取り組む時間を確保するのが難しいと感じるかもしれません。しかし、その「見落とし」が、長期的に見ると大きな損失へとつながる可能性もあります。

本記事では、「時間」と「お金」の両面から個人事業主にメリットをもたらす、見直すべき固定費5つをご紹介します。節約だけでなく、資産形成の第一歩として、ぜひご活用ください。

1. 通信費のムダを削る時間術と節約術

スマートフォンやWi-Fiなどの通信インフラは、現代のビジネスにおいて欠かせないものです。特に在宅ワークやフリーランスの働き方が一般的になった今、通信環境の整備は業務効率に直結する要素となっています。

しかしその一方で、契約プランの見直しを長らく行っていない人や、複数の通信回線を契約している人は、実際には使用していないサービスに対しても毎月高額な費用を支払い続けているケースが少なくありません。

例えば、大手キャリアのまま高額プランを継続していたり、モバイルWi-Fiと光回線を両方契約しているにもかかわらず、どちらかはほとんど使っていないといった状況が該当します。

これらは、格安SIMやMVNOといったサービスに乗り換えることで、月5,000円以上の節約も可能です。年間に換算すれば6万円以上の節約となり、その分を資産運用に回すことも十分に現実的です。さらに、通信費の見直しは、お金の節約だけに留まりません。

請求明細の管理、契約内容の確認、サポート窓口への問い合わせなど、通信関連の業務には意外と時間がかかります。このような「目に見えない時間的コスト」を削減することで、より本業に集中できる環境が整うのです。

2. サブスク整理で得るお金と思考の余白

近年では、業務支援ツールやデザインアプリなど、さまざまなサービスがサブスクリプション形式で提供されています。

これにより、低コストで高機能なサービスを活用できるようになりましたが、その反面、契約していることすら忘れてしまっているサブスクも少なくありません。

例えば、Adobe Creative Cloud や Microsoft 365、Canva Pro、ChatGPT Plus、Dropboxといったクラウド系のサービスは、業務に直結しているため、必要性をあまり疑わずに継続してしまいがちです。

しかし、実際には利用頻度が極端に低かったり、無料プランで十分だったりするケースもあります。これらのサービスは月々の費用は数百円〜数千円と比較的少額であるため、個別に見ると軽視しがちです。

しかし、合計すると月に1万円近く支払っているケースも珍しくありません。年間換算すれば10万円を超えることもあり、決して無視できる額ではないのです。

また、使っていないサービスに対して「解約しなければ…」という思いを抱え続けることは、無意識のうちに心理的なストレスとなります。それが積み重なることで、思考のノイズが生まれ、業務効率の低下を引き起こすこともあります。

定期的にすべてのサブスクリプションを棚卸しをして、直近1ヶ月以内に使ったかどうかを基準に整理しましょう。必要のないサービスは潔く解約し、本当に必要なものにだけ集中することで、思考もスッキリして経費も最適化されます。

3. 固定費を見直すことは最高の投資

投資や資産形成に関心を持っている個人事業主の方にとって、最初に取り組むべき“投資”は、実は「固定費の削減」かもしれません。なぜなら、支出の最適化はリスクゼロで始められる、最も堅実な投資行動だからです。

例えば、毎月5,000円の支出を減らすことができれば、年間で6万円のコスト削減につながります。これは、運用益として6万円を得るのと同じ効果があり、税引き前利益として換算すれば、さらに大きな意味を持ちます。

一方で、同じ6万円を投資信託で運用して3％の利回りを得るには、年間で200万円の投資資金が必要になります。この比較からも、固定費の見直しによる“確実なリターン”の価値がいかに高いかがわかります。

そして、こうして浮いた資金をつみたてNISAやiDeCoに回すことで、さらに未来の資産形成に寄与することができます。支出の見直しは単なる節約ではなく、持続的な成長戦略の一部として位置づけるべきです。

固定費の削減は、事業の健全性を保ち、心理的な安心感をもたらすという意味でも、大きな意味を持っています。日々の支出を最適化することは、収益性の高いビジネス運営に不可欠な“第一歩”なのです。

まとめ：支出の見直しが資産運用の第一歩

個人事業主にとって、売上や集客に目が向きがちですが、その裏側で継続的に利益を圧迫する要因が「固定費」です。これらは、意識しなければ増え続けてしまいますが、一度見直すだけでその後のキャッシュフローに大きな改善効果をもたらします。

特に、通信費やサブスクリプションサービス、そして契約内容が把握しきれていない業務ツールなどは、比較的見直しやすく、即効性のある節約対象です。

これらを定期的に見直し、削減した資金を未来の投資や緊急時の備えに回すことは、経営者としてのリスク管理能力を高める行動でもあります。

また、無駄な支出を削ることは、単に経費を減らすだけでなく、頭の中を整理し、本業への集中力を高める副次的な効果もあります。「時間」と「お金」の両方を生み出す固定費の見直しは、まさに経営と人生を整えるための一手なのです。

まずは今月の支出明細を眺めながら、小さな気づきから始めてみてください。そこから得られる資金とゆとりは、あなたの未来をより確実に支える“投資資源”へと変わっていくでしょう。

参考文献

• 総務省統計局｜家計調査年報：https://www.stat.go.jp/data/kakei/
• 中小企業庁｜小規模企業白書：https://www.chusho.meti.go.jp/
• 格安SIM比較サイト（価格.com）：https://kakaku.com/keitai/sim/
• マネーフォワード ME公式ブログ：https://media.moneyforward.com/
• 税理士ドットコム：https://www.zeiri4.com/