マイホームの購入や投資用不動産の取得は、多くの人にとって人生で最も高額な買い物です。しかし、不動産購入には「税金」と「法律」に関する正しい知識が欠かせません。契約後に「こんな費用が必要だったの?」「手続きを知らずに損をした…」と後悔するケースも少なくありません。
この記事では、不動産購入時に知っておくべき税金と法律の基本について、初心者にもわかりやすく解説します。特に見落としがちなポイントにも触れますので、初めて購入を検討している方はもちろん、将来的に考えている方もぜひ参考にしてください。

1.不動産購入でかかる代表的な税金とは?
不動産を購入する際には、複数の税金が発生します。代表的なものとして、「登録免許税」「不動産取得税」「印紙税」の三つがあります。
1-1.登録免許税のしくみと計算例
不動産の登記手続きにかかる税金が「登録免許税」です。たとえば、土地や建物を自分の名義にする「所有権移転登記」や、住宅ローンを利用する際の「抵当権設定登記」などが該当します。
たとえば、新築の一戸建てを購入するケースでは、固定資産税評価額が2,500万円の場合、軽減措置を受けた場合の所有権移転登記の税率は0.003です。この場合、登録免許税は2,500万円に0.003を掛けた7万5千円になります。軽減措置の対象となるのは、「床面積50㎡以上の住宅」や「新築後1年以内の登記」など、一定の条件を満たす物件です。
1-2.不動産取得税は一度だけの地方税
「不動産取得税」は、不動産を取得した際に一度だけ発生する地方税です。こちらも条件次第で軽減措置が適用されます。
たとえば、築15年の中古マンションを1,800万円で購入した場合、通常の税率であれば3%となり、54万円の取得税がかかる計算になります。しかし、住宅用の軽減措置が適用されれば、20万円台まで軽減されるケースもあります。居住用で床面積50㎡以上であることや、築年数などの条件を満たすかどうかを確認しておきましょう。
1-3.契約書にかかる印紙税のポイント
売買契約書を作成する際には「印紙税」が必要です。この税金は契約金額に応じて金額が異なり、契約書に貼る「収入印紙」で納税します。印紙を貼らずに提出した場合は、脱税と見なされるおそれもあるため、注意が必要です。
2.契約や登記で損をしないための法的知識
不動産の購入においては、税金のほかにも契約書や登記といった法律的な手続きが重要です。これらを正しく理解していないと、思わぬトラブルにつながることもあります。
2-1.売買契約書で確認すべき重要項目
売買契約書には、物件の引き渡し日、手付金の取り扱い、契約解除の条件などが記載されています。なかでも特に重要なのが「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」です。
これは、売買された物件に雨漏りやシロアリ被害などの欠陥があった場合に、売主がその責任を負うことを意味します。ただし、中古物件の場合、この項目が免責とされているケースもあるため、必ず内容をしっかりと確認するようにしましょう。
2-2.所有権移転登記の重要性
所有権移転登記は、不動産の名義を自分に変更するための大切な手続きです。登記を行わなければ、第三者に物件を売却されてしまったり、住宅ローンの審査に通らなかったりといったトラブルにつながります。
一般的には司法書士に依頼して手続きを行いますが、登記の種類によって数万円から10万円程度の費用がかかります。あらかじめ費用を見積もっておきましょう。
2-3.不動産会社との媒介契約も確認を
不動産会社と結ぶ媒介契約にはいくつかの種類があります。契約形態によって、物件情報の共有範囲や売買活動の自由度が異なるため、自分に合った契約形態を選ぶことが大切です。
3.意外と見落としがちな費用やトラブルの予防策
不動産購入時には、契約書に明記されていない費用や、思わぬトラブルが発生することもあります。あらかじめ知っておくことで、余計な出費やトラブルを避けられます。
3-1.固定資産税の清算に注意
物件購入時には、年間の固定資産税を日割りで精算するのが一般的です。たとえば、年間の固定資産税が12万円で、4月に物件を購入した場合、買主は9か月分にあたる9万円を売主に支払うことになります。この取り決めは契約書に明記されているか必ず確認しましょう。
3-2.マンションに特有のランニングコスト
マンションを購入した場合、月々の支払いとして「管理費」「修繕積立金」「駐車場使用料」などが発生します。これらはマンションによって金額が異なり、将来的に増額される可能性もあります。長期修繕計画の内容をあらかじめ確認しておくことが重要です。
3-3.境界線や法令制限の確認も必須
一戸建てを購入する際には、隣地との境界が曖昧な場合、将来的にトラブルになる可能性があります。購入前に「境界確認書」や「測量図」があるかを確認し、境界が明確かどうかを確認しておきましょう。
さらに、建ぺい率や容積率に違反している物件の場合、増改築ができなかったり、最悪の場合は違法建築と判断されることもあります。
4.不動産購入前に押さえておきたいチェックポイント
不動産購入を失敗なく進めるためには、以下のようなポイントを一つずつ確認しておくことが重要です。
まず、登録免許税、不動産取得税、印紙税といった税金の種類と金額を把握しておきましょう。続いて、契約書の内容をよく読み、「契約不適合責任」の取り扱いを確認しておく必要があります。また、登記費用や司法書士費用もあらかじめ見積もっておきましょう。
不動産会社とどのような媒介契約を結ぶのか、自分の希望や条件に合っているかも確認するべきです。さらに、固定資産税や管理費などの継続的に発生するコストについても予算に入れておくことが大切です。
境界確認や法令制限なども、見落とすと大きな問題につながるため、物件選びの初期段階で調査しておくといいでしょう。可能であれば、税理士や司法書士など専門家に相談することで、より安心して購入に進むことができます。
まとめ
不動産購入には、多くの税金と法律が関わっています。登録免許税、不動産取得税、印紙税といった税金の知識を持つことで、購入予算を正確に立てられるようになります。
また、契約書や登記内容を理解せずに進めると、後々後悔する可能性が高まります。今回紹介したようなチェックポイントをしっかりと押さえることで、安心・安全な不動産購入が実現できるでしょう。
特に初心者の方は、早い段階で専門家に相談することが、不安やトラブルを未然に防ぐ大きな一歩となります。ぜひこの記事を参考に、納得のいく不動産購入を目指してください。
参考文献
1. 登録免許税の税額表(国税庁)
URL:国税庁
2. 不動産取得税(東京都主税局)
URL:東京税務情報
3. 不動産売買契約書の印紙税の軽減措置(国税庁)
URL:国税庁
4. 不動産売買契約書で確認すべき重要ポイント(リビンマッチ)
URL:リビン・テクノロジーズ株式会社
5. 所有権移転登記が必要になるケースと手続きの重要性(田村司法書士事務所)
URL:tamura-js.jp
6. 3種類ある媒介契約、それぞれのメリット・デメリット(アットホーム)
URL:アットホーム
7. 不動産売却後の固定資産税は誰が支払う?(三井のリハウス)
URL:Rehouse
8. マンション購入前に知っておきたい!「管理費・修繕積立金」(三菱UFJ銀行)
URL:MUFGバンキング