私たちは日々、「これまでにない価値を持つプロダクト」を求められる時代を生きています。スマートフォンひとつとっても、かつては不可能と思われていた機能が当たり前になり、ユーザーの期待値は常に上昇し続けています。そのような環境下で、企業が新たな製品やサービスを開発しようとするならば、「ありきたりな発想」ではとても太刀打ちできません。
そこで注目されているのが、“ブレインバースト思考法”です。これは従来のブレインストーミングに、より構造化された質問設計やビジュアル化技法を取り入れ、「創造性を爆発的に引き出す」ことを目的としたアイデア発想手法です。ブレイン(脳)とバースト(爆発)という単語が象徴するように、限られた時間の中で多様な角度からアイデアを一気に生み出すことに特化しています。
本記事では、ブレインバースト思考法の概要と特徴、なぜ今の時代に求められているのか、どのようにプロダクト開発に応用できるのかを解説していきます。

1.ブレインバースト思考法とは何か?
ブレインバースト思考法とは、ひと言でいうなら「アイデア発想の高速化と多様化を同時に実現するための思考プロセス」です。一般的なブレインストーミングと異なり、以下の3つの要素が加わることで、より質の高いアウトプットが得られるのが特徴です。
1つ目は構造的な問いかけ(例:スターバースト法)です。5W1Hを基盤に、アイデア出しの方向性を明確化します。例えば、「この製品は誰が使うのか?」「いつ必要とされるのか?」といった問いを星型のフレームに沿って展開します。
2つ目は視覚化された思考の展開(例:マインドマップ、概念図)です。アイデアを図式化し、関連性や流れを見える化することで、思考が詰まりにくくなります。LucidchartやMiroのようなビジュアルツールを用いることで、チーム全体の共通理解も得やすくなります。
3つ目は極端思考と制約思考の組み合わせです。Brainzoomingでも紹介されているように、「常識を一度破壊して考える」発想法(極端思考)と、「制限がある前提で工夫する」制約思考を交互に使います。こうすることで、意外なアイデアが浮かびやすくなります。
また、KJ法や6-3-5法などのアイデア整理手法と比較しても、ブレインバーストの特長は「短時間で未完成でもとにかく大量に出す」ことにあります。後工程で選定・統合する前提なので、初期の段階で質を気にする必要がありません。これは特にスタートアップや少人数チームにとって大きな利点となるでしょう。
2.なぜ今、プロダクト開発に必要なのか
ブレインバースト思考法が注目される背景には、現代のプロダクト開発における「スピード」「多様性」「ユーザー起点」といった価値観の変化があります。もはや企業の競争は、技術力だけではなく、ユーザーに共感される“体験価値”をいかに早く創出できるかにかかっています。
その中で、従来の「ひらめきを待つブレスト」や「会議室の空気に依存するアイデア出し」では、時代のスピードについていけません。特にスタートアップや新規事業開発の現場では、「試行錯誤と仮説検証」を高速で回すことが求められます。つまり、質よりまず量、発想の偏りを排除し、失敗を前提に進める柔軟性が必要なのです。
導入にあたっては、ファシリテーターの役割も重要です。発言が偏ったり、発散しすぎたりすることを防ぐために、「時間配分の明確化」「視点の切り替えの指示」「問いの抽象度の調整」などがカギになります。経験が浅いチームでも、テンプレートを用いた実践から始めることで十分に成果を出すことが可能です。
3.実践で使えるブレインバースト技法
実際にプロダクト開発の現場で取り入れられているブレインバーストの技法は、多岐にわたります。ここでは代表的なものを2つ紹介します。
1つ目はスターバースト法(Starbursting)です。5W1Hのフレームを星型に配置し、中心に「アイデアの種」や「新規製品のテーマ」を置きます。そこから「なぜ?」「誰に?」「どうやって?」といった問いを放射状に展開することで、アイデアの観点を広げることができます。
2つ目はエクストリーム思考法(ExtremesThinking)です。「5歳児でも使える製品にするには?」「電力を使わない前提で考えると?」といった極端な前提を用いて、視点を一気に切り替える思考法です。常識を一度手放すことで、隠れたニーズや機能が見えてくるケースもあります。
4.成功事例に学ぶアイデア創出の型
たとえば、M3Designでは、開発初期のブレストに“死に筋を避ける6つの戦略”を導入しました。無駄な議論を省きながら、発想の多様性を保つ手法を体系化しています。
またGoogleでは、OKRと連動させた「クォーターブレスト」を実施し、チーム内のフィードバックと仮説検証を一体化しました。常に“問いから始める”ことを重視し、短期集中で成果を出しています。
国内でもIndeedJapanが、職場で活用できる25のブレインストーミング手法を公開しており、スターバースト法やSCAMPERなどが多くの業種で採用されています。特に重要なのは、ユーザーがまだ言語化していない課題をどう発見するかという視点です。
5.まとめ
ブレインバースト思考法は、ただのアイデア出しのテクニックではありません。それは、問いを重ね、思考の型を見直し、限られたリソースで最大の創造性を引き出す「マインドセットの転換」です。プロダクト開発がより高速化し、競争が激化するいまこそ、自分やチームの発想を根本から見直す必要があります。日常的に問いを立てる習慣を身につけることで、ブレインバーストは特別なスキルではなく、誰もが使える日常ツールへと変わっていくはずです。
参考文献
- MiroJapan|ブレーンストーミングを進化させた視覚化技法
https://www.mindmanager.com/jp/resources/mindstorming-ebook/ - MindManager公式ブログ|スターバースト法とは
https://blog.mindmanager.com/jp/starbursting/ - M3Design|6WaystoAvoidaDead-EndProductDevelopmentBrainstorm
https://www.m3design.com/product-development-brainstorming-strategies/ - Brainzooming|NewProductIdeaBasicsandExtremesin30Minutes
https://brainzooming.com/blog/strategic-thinking-exercise-new-product-idea-basics-and-extremes-in-30-minutes - IndeedJapan|25のブレインストーミングのテクニック
https://jp.indeed.com/career-advice/career-development/brainstorming-techniques - Lucidchart|12の効果的なブレスト手法
https://www.lucidchart.com/blog/brainstorming-techniques - AtlassianJapan|プロジェクトの5つの手法
https://www.atlassian.com/ja/work-management/project-collaboration/brainstorming/brainstorming-techniques