近年、個人事業主やフリーランスの間で「クレジットカードの使い分け」が注目を集めています。その背景には、経費管理の効率化、キャッシュレスによるポイント還元、そして資産運用との連動といった複数のメリットがあるからです。
とはいえ、「どのクレジットカードをどう使い分ければいいのか?」「節税や投資とどう関係するのか?」と悩む方も多いのではないでしょうか。
本記事では、「時間とお金」の両方に効果を発揮するクレジットカードの使い分け術について、個人事業主の視点からわかりやすく解説します。
特に、会計効率、資産形成、信用力アップの三つの柱に焦点を当て、今日からすぐに実践できるノウハウを、実例・データ・専門家の視点とともに紹介します。

1. クレジットカードで経費を見える化する方法【確定申告にも役立つ】
国税庁の「青色申告の手引き」によれば、経費と私的支出の混同は税務調査時に指摘されやすい項目のひとつとされています(出典:国税庁公式サイト)。そのため、事業用とプライベート用のクレジットカードを分けて使用することが、税務リスク回避に有効といえます。
実際、経費管理をクレカで一元化したフリーランスのAさん(東京都・40代)は、「以前はレシートの仕分けに1日かかっていたのが、freee連携後は1時間程度で完了するようになりました」と語っています。
freee株式会社の2023年の利用実績データによると、クレジットカード連携ユーザーはそうでないユーザーに比べ、経理作業の所要時間が平均で月5.3時間削減されているといいます。
さらに、楽天ビジネスカードのように、楽天銀行や楽天会計ソフトと連携できるカードは、自動仕訳・自動記帳に対応しており、手作業を極限まで減らすことができます。
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・カードは、年会費こそ高めですが、最大100万円以上の高額決済にも耐えられる信用枠が魅力で、仕入れが多い事業者に重宝されています。
2. クレカのポイントで資産運用!楽天証券・SBI証券の活用術
2024年現在、楽天証券では楽天カードによる投資信託の積立(上限月5万円)に対して1%の楽天ポイントが還元される制度があります。これを年間に換算すると最大6,000円相当のポイント還元があり、ポイントはそのまま再投資に使うことも可能です(出典:楽天証券公式)。
例えば、事業主のBさん(千葉県・30代)は、楽天証券での毎月3万円の投信積立を実践中。「1年間で3,600円分のポイントが投資に回り、その分も含めて運用成績が+ 7%となった」と報告しています。通常の支出がそのまま資産形成に結びついている典型的な例です。
また、SBI証券×三井住友カード(NLやゴールド)では、「Vポイント投資」という仕組みが利用可能です。
特にNLゴールドカードは、年間100万円の利用で年会費が無料になるだけでなく、SBI証券での積立設定で最大1%のVポイント還元が得られるため、長期的な運用効率が高く評価されています。
ファイナンシャルプランナーの石井雅人氏も、「キャッシュレス還元をポイント投資に結びつけることは、低リスクで始められる資産形成手段として非常に有用。事業主こそ、経費という『固定支出』を投資に変える視点を持つべき」と述べています(参考:マネー専門誌『ダイヤモンドZAi』2023年7月号)。

3. 個人事業主が信用力を高めるクレカ活用法【融資・法人化対策】
中小企業庁によると、日本の起業家の約70%が「資金調達の難しさ」を課題に挙げています。特に法人化を視野に入れた場合、銀行融資の審査では個人のクレジットヒストリー(クレヒス)が重視されます。
過去に開業資金100万円を借りたCさん(大阪府・30代)は、アメックスビジネスカードで2年間にわたって延滞なく決済・返済を繰り返し、信用スコアを向上させました。
その結果、日本政策金融公庫の融資審査では、他の同業者よりも低金利・長期返済の条件で通過できたとのことです。クレジットヒストリーは、将来の賃貸契約、事業ローン、法人名義での口座開設などにも大きく関わるため、事業用カードの適切な管理が必要不可欠です。
また、2024年1月時点で、日本信用情報機構(JICC)に登録されているクレジットカード延滞者の割合は3.1%と報告されています。専門家の間では、「たった1回の延滞でも3〜5年は記録に残るため、事業拡大時に足かせになりうる」と警鐘が鳴らされています。
一方、リボ払いやキャッシングの多用は「信用力の低い行動」とみなされるため、原則として一括払い・即時決済が推奨されます。
まとめ:クレジットカードの使い分けで、事業の未来が変わる
クレジットカードの使い方次第で、個人事業主は「時間」と「お金」の両方を大きく効率化できます。たとえば、会計ソフトとの連携によって経費処理の工数が月5時間以上短縮され、浮いた時間を本業や営業活動に回すことが可能です。
また、毎月の経費を活用したポイント投資により、年利換算で3~7%の資産増加が実現します。そして、カード履歴を正しく積み上げることで、将来の融資や法人化における信用力が格段に向上します。
ただ「支払う」ための道具として使うのではなく、資産形成・経営安定・事業拡大の戦略的ツールとしてクレジットカードを使いこなす。これが、現代のスマートな事業主の在り方なのかもしれません。
参考文献一覧(記事末尾に掲載する形式)
- 国税庁「青色申告の手引き」https://www.nta.go.jp/
- freee株式会社「クラウド会計の導入効果調査2023」https://www.freee.co.jp/
- 楽天証券「楽天カード決済での積立投資」https://www.rakuten-sec.co.jp/
- 三井住友カード公式サイト「Vポイント投資」https://www.smbc-card.com/
- 中小企業庁「起業家の資金調達状況に関する調査」https://www.chusho.meti.go.jp/
- 日本信用情報機構(JICC)「信用情報統計レポート」https://www.jicc.co.jp/
- ダイヤモンドZAi(2023年7月号)石井雅人氏インタビュー