私たちは「がんばる=正義」とつい考えがちですが、がむしゃらに動いても成果につながらなければ時間も労力もムダに終わります。営業やマーケティング、社内調整などビジネスシーンにはやるべきタスクが山ほどありますが、その中には売上や利益を直接生まない“お金を生まない努力”も多く含まれています。限られた時間を最大限に使いこなすには、単に忙しく働くだけではなく「時間効率」の視点で取り組むべきタスクを選び取ることが不可欠です。
本記事では、まずお金を生まない努力の落とし穴を明確化し、次に時間効率の視点でタスクを見極める方法、ROIを時間軸に置き換えた計算式、そして具体的な時間管理術を解説します。最後に成果を最大化するポイントをまとめました。

1.お金を生まない努力の落とし穴を明確化
「忙しさ=成果」という誤解は多くのビジネスパーソンが陥りやすい罠です。会議のサポート業務、資料作成、メール対応、細かい調整作業など、日々の雑務は山積みですが、これらすべてが会社の利益に直結するわけではありません。特に「誰でも代替可能」「社内手続き的」「売上貢献ゼロ」に該当するタスクに時間を割きすぎると、本来注力すべき高インパクト業務の機会を失います。
まず、自分が日々取り組んでいるタスクを「収益への貢献度」と「投入時間」の二軸で振り返ってみましょう。ここで言う「収益への貢献度」とは、そのタスクを行うことで見込まれる売上やコスト削減効果のことであり、「投入時間」は実際にかかった時間です。これらをもとにマトリクス化すると、成果を生む業務だけを選別しやすくなります。
2.時間効率の視点でタスクを見極める方法
時間効率とは、「限られた時間をいかに有効活用して最大の成果を生み出すか」という考え方です。タスクを可視化し、優先順位を付けるためには以下のステップで進めます。
最初に、自分の日常業務を全てリストアップし、各タスクに「見込利益」を金額換算して仮置きします。次に、過去の作業ログやスケジュールから「所要時間」を割り出します。
この二つの数値を組み合わせて計算した「時間価値(=見込利益÷所要時間)」を一覧化し、高いものから順に並べることで、優先的に取り組むべき業務が一目でわかります。
こうして作成した「時間価値マトリクス」は、月次レビューの際に更新することで、市場動向やプロジェクト状況の変化に合わせてタスクを柔軟に再評価できます。さらに、全活動のうち20%の高インパクト業務に注力し、残り80%は削減・外注・自動化を検討する80:20の法則(パレートの法則)を意識すれば、時間効率は飛躍的に改善します。
3.ROIから割り出す時間価値の計算式
ビジネスで活用されるROI(投資利益率)は、「投資に対してどれだけ利益が生まれたか」を示す指標ですが、これを「時間あたり」の指標に置き換えるとタスクの優先順位が明確になります。計算式はシンプルです。
時間価値=(タスクによって見込まれる利益)÷(タスクに要した時間)
たとえば営業訪問で月間50万円の新規契約が見込める場合、1回あたりの訪問に2時間かかるとすれば、時間価値は25万円/時です。一方で、社内会議のアジェンダ作成に1時間かけてコスト削減効果が2千円程度なら、時間価値は0.2万円/時と算出できます。
実践ステップはまず「タスク洗い出し後、見込利益を金額換算する」ことです。その後、過去ログから所要時間を割り出し、計算結果を高い順に並べ替え、優先順位を設定します。
このように「時間価値」を可視化すれば、本来時間をかけるべき業務と削減・外注すべき業務がクリアになります。
4.時間管理術で生産性を最大化するコツ
時間価値を把握したら、実際の時間管理術で生産性をさらに高めましょう。追加で意識したいのが「ミニマスタスク設定」です。これは、1日のうち最も重要な3タスクだけに絞り込む手法で、自分のエネルギーが高い時間帯に集中して取り組みます。このほか、メールチェックやSNSは1日2回までに制限し、通知オフで集中力の乱れを防ぐのも効果的です。他にも以下のやり方が挙げられます。
- ポモドーロ・テクニック:25分間の集中作業+5分休憩を繰り返す
- バッチ処理:同種のタスクをまとめて行い、切り替えコストを削減
- ノー会議デー設定:週1日は会議を入れず、深く集中できる時間を確保
ミニタスク設定と合わせることで、1日の行動がさらに洗練されます。朝のゴールデンタイムに提案書作成や戦略検討を集中して行い、午後はフォローアップや反省に使うスケジュールを設計するのが効果的です。
5.まとめ
お金を生まない努力を排除し、時間価値に基づいてタスクを選別することで、限られた時間を最大限に活かせます。ROIを時間軸に置き換え、可視化すれば高インパクト業務が明確になり、80:20の法則に沿って業務配分を見直せます。さらにポモドーロやバッチ処理、ノー会議デーだけでなくミニマスタスク設定や通知オフも活用し、日々のレビューとツール活用で継続的な改善を実施すれば、生産性は飛躍的に向上します。今日から時間効率の視点を取り入れ、成果を最大化しましょう。
参考文献
【時間当たり採算の本質。経営者・マネージャーが知るべき成功指標とは】
https://www.oro.com/zac/blog/profit-per-hour/
【ROIとは?意味や計算式、ROASとの違いや改善方法を解説】
https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/sp/contents/column/20221216_roi.html
【経営者の視点から~時間価値を高める~】
https://www.topc.us/post/%E7%B5%8C%E5%96%B6%E8%80%85%E3%81%AE%E8%A6%96%E7%82%B9%E3%81%8B%E3%82%89-~%E6%99%82%E9%96%93%E4%BE%A1%E5%80%A4%E3%82%92%E9%AB%98%E3%82%81%E3%82%8B~
【仕事の効率化を図る意味とは?5つの視点から考える生産性向上】
https://ones.com/ja/blog/knowledge/work-efficiency-productivity-improvement-2/
【時間価値の見える化で人生を豊かにする究極の理論】
https://note.com/stak_iot/n/n60bab7dd8489